トライアウト

彼はマウンドに立っていた。
トライアウト。
クビになった野球選手達が拾ってもらえる球団を求めて
テストを受ける場所だ。

彼は甲子園の優勝投手だった。
スマイル王子として人気も出た。
決勝戦では怪物と称される北海道、北の国高校の山田正志に投げ勝った。
伊藤祐司。
プロ入りした山田を尻目に大学進学。
大学日本一の栄冠をぶら下げ、ドラフト1位でプロ入り。
先にプロ入りした山田は、高卒1年目から活躍し、伊藤が入団した時は
エースの座を掴んでいた。

ついに祐ちゃんプロ入り。
マーくん祐ちゃんの対決再び!
マスコミは盛り上がった。

山田は、伊藤の入団に刺激されたのか、グングン飛ばした。
伊藤もまだまだプロの身体にはなっていなかったが
そこそこの勝ち星を上げた。
2年目には祐ちゃん人気も手伝って開幕投手に抜擢され
見事勝ち星を上げた。

ここまでは順調だった。
オールスターにも選ばれ、意気揚々だった。
しかしその時だった。
肩に激痛が…。
オールスターも辞退、リハビリに努めた。
元々負担の少ない綺麗なフォームの伊藤。
しかし肩をかばえば肘を痛め、なかなか回復しない。
長期離脱を余儀無くされる。
勝ち星を重ねる山田。
肩の故障で戦線離脱の伊藤。
マスコミも初めは、山田と伊藤を比較していたが
最近は伊藤の名前を取り上げるマスコミもいなくなった。
ゴールデンルーキーは毎年毎年入ってくる。
今年は二刀流の新人選手の話題、そのライバルの甲子園の星の投手の
話題で持ち上がった。

またそのゴールデンルーキー達の活躍でさえ、霞む山田の活躍。
なんと開幕24連勝!
日本シリーズをも制し、来季はメジャーに挑戦か!
と噂されていた。

念入りなリハビリにより、ようやく痛みが取れた伊藤。
これからはより肩に負担の少ないフォームに修正。
2軍で調整する伊藤。
しかし2軍戦での登板でさえ、結果を残せない。
投げても投げても滅多打ち。
人気者の伊藤、球団としても彼を使いたいが打ち込まれる。
球団も前年度リーグ優勝を果たしているのに最下位に沈んだ。

山田はポスティングシステムと言うシステムを使って
メジャーに進んだ。
高額の契約金。
山田は意気揚々と海を渡って行った。

伊藤は依然として調子が上がらない。
次の年も殆ど1軍に上がれないまま
ついに戦力外通告を受けた。

伊藤は引退を考えたが、やっと肩の痛みも完全に癒えた。
さあ、これからだと言う時に戦力外通告。
このままでは終わられなかった。
肩の調子も今までになく調子が良い。
伊藤はトライアウトに賭けた。
もちろん自信がある。
肩さえ治れば、絶対に大丈夫だと。

いよいよトライアウト当日を迎えた。

トライアウト当日。
伊藤は周りを見渡した。
つい最近まで活躍していた選手もいる。
「日山、なんであの人がいるんだ? 」
某球団で4番を打っていて、天才と言われていた男だ。
伊藤はこの世界の厳しさを改めて知った。

ついに伊藤の登板。
ズッバーン!ズッバーン!
「よし、球は走っている。 行けるぞ! 」
打者6人に対戦。
1イニング目、三者三振!
見事なスタートだ。
各スカウト陣も唸った。
2イニング目。
三振!次の打者も三振!
伊藤は復活を確信した。
次の打者はあの日山だった。
ツーストライクと追い込み、最後の決め球。
1番自信のあるシンカーを投げ込んだ!
「よし決まりだ! 」
カキーン!
打球は外野フェンスを超えた。

伊藤は球団からの連絡を待った。
きっと来るはずだ。
伊藤は待った。
電話のそばから離れず、何日も待った。
しかし連絡が来ることはなかった。

山田はメジャーのマウンドに上がっていた。
期待されて、高額の契約金と連勝記録携えて、メジャーに乗り込んだ。
力で抑え込む山田のピッチング。
特にピンチになってからの山田のピッチングは凄かった。
しかしランナーを溜めてから、いとも簡単に打たれた。
1年目は4勝止まり、負けの数は勝ち星の倍以上だった。
2年目も山田は苦戦していた。
打ち込まれる日が続いた。

トライアウトでさえも、拾ってもらえなかった伊藤は
もはや生きる望みを失っていた。
就職する訳でも無く、ただボンヤリする日々が続いていた。
そしてついに覚悟を決めていた。

山田の苦戦は伊藤の耳にも届いていた。
「バカな奴だなぁ。
あれだけの球を持っているんだから、もっとアタマを使って
投げれば良いんだよ。
ただただ速い球だけを投げていたら、そりゃ打たれるよなぁ。。。
なんたって、あっちはこっちと違ってパワーヒッターばっかりなんだから
俺だったらなぁ。。。
まあ、俺には関係ないことだけど。。 」
伊藤はありったけの睡眠薬を呑み込んだ。

山田は今日も打ち込まれていた。
山田はすっかり自信を失っていた。
眠れない夜が続いていた。
この日は何時もの倍以上の睡眠薬を口にした。
「日本に帰りたい。」
彼の頬を涙が流れた。


伊藤は長い長い眠りから目が覚めた。
「ここは、何処だ…? 」

そうか、俺は大量の睡眠薬を飲んだんだった。
死に切れなかったのか?
それとも天国なのか?

その時、ノックの音がして、ドアが開いた。
見知らぬ男が何か言っている。
「山田、大丈夫か?
随分うなされていたようだけど。 」
なに?山田?
俺は伊藤だぞ!
男はまだ何か言っているが、頭がボーッとして、よく聞こえない。
伊藤は顔を洗うため洗面所へ。
しかし洗面所の場所が分からない。
「あれ? 」
なんとか洗面所にたどり着くと、伊藤は人生で1番の驚きを体験した。

「あれ?山田、何してんだ?
なんで山田がここにいるんだ? 」

その山田が自分だと気付くまで、どれだけの時間がかかっただろう。
伊藤は声を失った。
男が寄って来た。
全く知らない男だった。
男も異変に気付いたようで、「山田…大丈夫か? 」

男は山田のマネージャー山内だった。
伊藤はまだパニックになっていた。
「山田、落ち着け!
良いか?俺が誰だか分かるか? 」
首を振る伊藤。
「ハァ…。」山内は、溜息を突いた。
最近、負けが混んでいてかなり参ってはいたが。。。
そして山内は睡眠薬の瓶を見つけた。
お前、睡眠薬を飲んだのか?
うなずく伊藤。

少しずつ事態を把握して来た。
伊藤はすがる思いで、山内に事態を話した。
山内は信じられなかった。
「またまた〜俺をからかってどうするんだよ。 」
山内は鼻で笑った。

「と言うと、お前はあの伊藤だと言うのか?
じゃ、山田はどうした? 」
「俺にも解らない。
今起きたら、山田になっていたんだ。 」
「そうかそうか、解った。 俺に任せておけ。
俺はお前のマネージャーの山内だ。 」

山内はまだ信じていなかった。
山田がノイローゼで少し頭が可笑しくなったんだと思っていた。
ここは逆らわず、話を合わせておこう。

しかし困った事になった。
こっちの世界では契約が全てだった。
ここでチームを
離れることになったら、莫大な違約金を取られてしまう。
ここは話を合わせて、何とか山田に頑張ってもらわないといけない。

伊藤は山内の巧みな誘導により、山田として試合に出ることになった。


さてさて、この後の展開はどうなって行くのでしょう?


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イチゴさん

こんばんは〜♪
基本的には、あの2人がモデルになっていますからね。
キャラクターのイメージも、どんどん膨らませて下さいね。
そうです。
これからは通常の仕事に確定申告の準備があります。
アタマ痛いです。(ーー;)

心姫さん

こんばんは〜♪
これって入れ替わっているのかな?
どうしょうかな?と思ってました。
どうなるんでしょうね?
次の展開が楽しみですね。
イメージが消えないうちに、早く書かなくちゃ。v-356

yumeさん

優しいyumeさん
本当に感謝しています。
摩訶不思議な勘太ワールド。
こんな物語があったら良いなぁと言う感じで書いています。
アイデアは次から次に浮かぶのですが、筆の方がついて行きません。^^;
おまけに仕事もしなくちゃいけないし…σ(^_^;)

とんとんさん

ご訪問ありがとうございます。
ご連絡、ありがとうございます。
了解しました。気にしないで下さいね。
良い判断だと思います。
今回の物語はなかなか面白い展開になりそうです。
後半ガッカリにならないように頑張ります。^^;

なんだか、勝手に頭の中で、顔が、あの二人を思い浮かべていますが、よろしいですかね?(笑)

明日からお仕事頑張って下さい!

こんにちは

後半のこの展開は。。。
不気味でもあり、これぞ勘太先生の作品だ!
と続きを楽しみにしています^^

こんにちは~

これは今後、気になりますね~。
これってやっぱり入れ替わってるのかな。
違うマウンドにお互い立って、
自信を取り戻してほしいですね~。

No title

なんだか 二重投稿になりすみませんでしたv-12

コメント送信後、記事の続きが...?
続きも...
勘太ワールドの世界に、つい引き込まれて読んじゃいました (*^▽^)/

この続き!展開楽しみデスv-354

yumeさん

沢山のコメント、ありがとう!
アタマにご挨拶のページを作ってみました。
yumeさんキャラのイラストをアップしました。

イチゴさん

早速のご訪問ありがとうございます。
初めての野球の物語。
気合が入ります。
これからどんな展開になって行くんでしょうね?

☆トライアウト☆

伊藤君も山田君も、互いに無いものを持っているのだから

諦めないで欲しいなぁ...v-353


二人は入れ変わったの?...この展開とても楽しみですv-354

これはタイトルからして、私は読みたい気、MAX!!!

これはコメントできるかな?この前できなくて…
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勘太と言います。
よろしくお願いします。
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暖かい絵を描きたいなぁ。

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