モンスター井口

みなさん、ご訪問ありがとうございます。
YouTubeの投稿にハマり、昔のイラストを連続でアップしていました。

「ボクシングを始めたアリサヤさん」も終わり
井口と浩一のタッグについて書いて見たいと思います。
井口とミキ!ミキと浩一!の三角関係。
そして井口に憧れて入って来たイチゴの恋心!

「ボクシングを始めたアリサヤさん」では表して無かったそれぞれの想いなどを
書ければ良いなと思います。

「モンスター井口」

井口は世界挑戦を明日に控えていた。
そしてそばにはイチゴがいた。
ふたりはそれぞれ大事な試合を控えていた。
そしてお互いの健闘を誓い合っていた。


幼い頃からボクシング漬け!
物心が付いた時には、グローブをはめていた井口。
井口の父親はプロボクサーだった。
天才ボクサーと言われながら、拳を傷めてしまい引退。
その想いを息子に託した。
井口には才能があった。
幼い頃から数々の大会に出場し、好成績を収めていた。
高校時代は無敗のまま全ての大会を制した。
あまりの強さにモンスター井口と恐れられていた。
そして多額の契約金で王拳ジムにやって来た。
井口は天狗になっていた。
トレーナーのワタやんの指導にさえ、まともに耳を傾けなかった。
ある時、ひ弱な練習生がやって来た。
ワタやんは井口に見向きもせず、そのひ弱な練習生ばかりを熱心に指導する。
そうなると面白くない井口であった。
「へい!俺で良かったらスパーリングの相手してやろうか?」
井口はその練習生に嫉妬していた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

鳴り物入りで入って来た井口。
「今日からここが俺の戦いの場か。」
井口は身の締まる思いだった。
俺は世界チャンピオンになるんだ!
絶対世界を掴んでやる!

「よー来たな!俺はお前担当のトレーナー渡辺だ!
ビシビシシゴいてやるぜ!覚悟しておくんだな!」
突然竹刀を持って現れた時代錯誤のオヤジ!
王拳ジムの鬼トレーナーワタやんだった。
「ふん!余計なお世話なんだよ!俺は俺のペースでやらせて貰うぜ!
あんた見たいな三流ボクサー上がりのトレーナーなんて真っ平だよ!」
井口は天狗になっていた。
「な!なんだと!」
ワタやんの顔が見る見る赤くなって鬼のような顔になって行く!
その時だった、パシッと頬を叩かれた。
「あんた!何様か知らないけど、良い加減にしなよ!」
ちょっとお転婆な可愛い少女だった。
「だ、誰だお前は!」
「あたいはミキ!あの鬼のようなトレーナーの娘さ!
あんたもここに入ったんなら、ここのルールに従いな!
それにあたいの親父は3流ボクサーなんかじゃ無いからね!」
フッ、気の強い奴だぜ…。
これが井口とミキとの初めての出会いだった。


ミキは井口を見ていた。
幼い頃から、父のワタやんからボクシングの指導を受けていたミキには
井口の凄さが分かる。
全てが飛び抜けていた。
まさにモンスターと言われるのが分かる。
なんであんな奴気になるんだろう?
あんな奴大嫌いなはずなのに…。

井口にはもう1人専属トレーナーがいた。
井口の父親、井口利明だ。
彼は天才ボクサーだった。
世界挑戦も間近だった。
世界挑戦の前哨戦、全勝の天才ボクサー井口利明の日本ベルトに挑戦する
年配ボクサーがいた。
それがワタやんだった。
井口利明は試合中、右拳を傷めワタやんに敗れた。
そして世界挑戦も選手生命も絶たれたのである。
利明は夢を息子に託した。
こうして井口は幼い頃から利明の英才教育を受けて育って来た。
井口は利明の期待に応え続け、才能を開花させて行った。
インター杯ではライバル達を蹴散らし、無傷のまま全ての大会を制した。
正にサラブレット中のサラブレットだった。

王拳ジムでも井口に敵う選手は居なかった。
井口はスパーリングをしていても物足りなかった。
ワタやんの指導にも反発した。
親父の選手生命を奪ったと言う憎しみだけの目で見ていた。
ワタやんに反発する度、何故かミキの顔が浮かんんだ。
どうしたんだ?
あんなお転婆娘を気にかけるなんて…。
何と無く心にモヤモヤが残る感じだった。

そんな時、不思議な少女アリサヤが入会して来た。
何と無く何処かで会った事があるような気がする子だ。
女子はやっていないと断るワタやんを説得し入って来た。
まるで昔から知っているような感じだった。

アリサヤは見た目は見るからにボクシング素人だった。
全然鍛えられていない!
しかしボクシングセンスは抜群だった。
かなりのボクシングをやっている感じだ。
見た目とこれ程違う選手も珍しい。
そのアリサヤが1人の少年を連れて来た。
ひ弱な、見ただけで虐められっ子だと分かる。
そんな奴を何故?
ボクシングを覚えさせて復讐をさせる気か?
確かにそんな目的でボクシングを始める奴もいるだろう。
しかしそんな奴は長続きしない!
そもそもボクシングを続ける根性がある奴はイジメに会うこともない。
その少年は浩一と言った。
ワタやんの厳しい課題も黙々とこなしている。

いよいよ俺のデビュー戦が決まった。
俺の実力を見せつけてやるぜ!
それは華やかなデビューだった。
1ラウンド、一発でKO勝ちだ!
ワタやんは井口の才能に震えた。

井口のデビュー戦の後、まだジムに通っている浩一にワタやんは気が付いた。
こんなひ弱な奴がまだボクシングを続けていたとは驚きだった。
そして俺が言いつけた課題を忠実にこなしていたとは…。
身体も絞れて来ている。
そして課題を与えていたジャブを見て、ワタやんは驚いた!
凄い!ジャブと言うより、ストレートだ!
しかも1流選手のストレートだ!
ワタやんは浩一の密かな才能に気付いた。
それから付きっ切りで浩一を指導した。
浩一はドンドン吸収して行く!
ワタやんは教える喜びを感じていた。

面白くないのは井口だ!
あれだけ煙たがったワタやんが自分の元を離れ、あんなひ弱な練習生の指導をしている!

嫉妬していたのかも知れない!
井口は遂に言った。
「ヘイ!俺で良かったらスパークリングの相手してやろうか?」
しかし、一発でダウンを奪われることになろうとは、井口は思ってもいなかった!
関連記事

夜泣きと新幹線

みなさん、ご訪問ありがとうございます〜♪

随分前に描いたイラストです。
可愛いチビtakuくんが夜泣きをした時の一コマ。

汽車が大好きなチビtakuくん。

関連記事

のんびりくん旅行記

みなさん、ご訪問ありがとうございます。
すっかりYouTubeにハマっている勘太です。

今回はのんびりくんの旅行記をアップします。

関連記事

チューリップと夕日

みなさん、ご訪問ありがとうございます〜。

関連記事

勘太ワールドのコマーシャル



みなさん、ご訪問ありがとうございます〜。
こんなの作って見ました。
初めてのYouTube投稿です。
関連記事

ボクシングを始めたアリサヤさん 最終章

みなさん、ご訪問ありがとうございます〜♪

ミキちゃん、負けてしまいましたね。
ショックです…。
でもまだ若いからこれから頑張ってくれるでしょう。

初めから読みたい方はこちらからどうぞ


ミキは悔しくて、敗戦の後も練習に励んだ!
その後、ミキは復帰戦を勝利で飾り、その後も勝ち進んだ。
イチゴもデビューを果たし、只今3連勝中だ。
そしてチヒロは念願のアリサヤとの試合が決まった!

チヒロもアリサヤも連勝中だ。
勝った方が姫野ココロに挑戦!
また、その勝者が世界王者ユカ・メンドーサと対戦させると言う話が有力視されていた。
そしてイチゴもその後に続いている。

チヒロにとってやっと巡って来たチャンスだ。
まゆ子さんの仇を取る!
チャンピオンと戦うより嬉しかった。

チヒロはスピードパンチ力共に成長していた。
只々アリサヤと戦う事だけを夢見て辛い練習に耐えて来た。
そして決戦の日はやって来た。


遂にまゆ子さんの仇を討てる!
チヒロとアリサヤの試合が始まった。
「良いか!あいつのカウンターには気を付けるんだぞ!
けして大振りはするな!」
会長がチヒロに声をかける。
「ハイ、わかってます!」
チヒロはアリサヤのビデオは何回も何回も見ていた。
1ラウンド開始のゴングが鳴った。
会場には姫野ココロも観に来ていた。
勝った方が自分に挑戦して来るのだ。

チヒロはスピードを生かしグイグイ攻めて来る。
アリサヤはそれを風のように交わす。
しかし交わす方にチヒロのパンチが飛んで来る!
かなり研究しているようだ!
「なる程…なるな!」
アリサヤの中の清は思った。
〜だ大丈夫なの?〜アリサヤは清に言った。
「ああ、心配いらないよ。」
アリサヤはチヒロの猛攻をブロックで防ぎ、距離を測るようにジャブを出す。

1ラウンドが終わった。
「良いぞ!良い動きだ!」
会長がチヒロに言う。
「いや、余裕を持ってよけられている感じです。チキショー!」
2ラウンド開始のゴングが鳴った。
チヒロは飛び出し、連打を放つ!
アリサヤもタイミングを図ったようなパンチが飛び出す!
ひとつ一つがチヒロに的確に当たる!
アリサヤはチヒロをコーナーに追い込んだ!
「なんて的確なパンチなんだ!」
チヒロが苦し紛れに出したパンチにカウンターを合わせた!
チヒロは崩れ落ち、まゆ子の敵討ちも崩れ去った。
ぐあぁああああ!まゆ子さん!ゴメン…。
チヒロは倒れ起き上がることは無かった。
見事なKO勝利だった。

「くっ、なんて強さなの?!」
姫野はアリサヤを見つめた。
いよいよ次は姫野との一戦だ!
しかし姫野はアリサヤの弱点を掴んでいた。


遂に姫野との1戦が決まった。
今までの相手とは違う!
ボクシングのセンスは抜群だ!

姫野はアリサヤの分析をしていた。
あの強いボクシングの割りには、まだ身体が絞れていない。
まだまだ身体を鍛え始めて間も無い身体つきだ。
恐らくスタミナはそんなに無いはずだ。
勝負は後半にした方が良いだろう。

そして姫野は必殺パンチに磨きをかけていた。
その名もココロボンバー!
正に爆弾のような破壊力だ!
ドバーンッ!
サンドバックを撃ち抜く!
ココロボンバー!炸裂!
サンドバックが舞い上がる!
恐らくこのパンチをまともに喰らって立てる選手はいないだろう。
アリサヤのカウンターパンチ対ココロボンバー!の対決だ。

そして決戦の日は来た。
会場はココロのファンで覆い尽くされている。

「良い?アリサヤさん!姫野ココロは完成さっれたボクサーだわ。
でもあなたならきっとやってくれると信じている!
頑張るのよ!」Rコーチはアリサヤに絶対の信頼をしている。
悲願の打倒姫野が叶うと信じていた。

カーン!
ゴングは鳴った。

アリサヤはジャブを出す!
姫野もジャブで応酬!

速いスピードの勝負だ。
軽いステップでパンチを放つ姫野!
軽くよけフックを返すアリサヤ!
それをブロックしストレートを放つ姫野!

両者一歩も譲らず互角の展開で1ラウンドを終えた。
「中々良い調子よ!
焦らずじっくり相手を見て行って!」Rコーチが指示を出す。

2ラウンドが始まった。
素早いパンチの応酬が続く!
しかし姫野は勝負は後半だと自分に言い聞かせていた。
素早い連打で相手のスタミナを奪う!

清は翔太の事、百合子の事、そしてボクシングを始めた時のこと
プロテストの事、デビュー戦でのアニマル浜口の事
色々思い出していた。

そしてこの姫野ココロ戦!
本当に良い試合だ!
アリサヤの身体を使ってボクシングを出来ることに感謝していた。

姫野のパンチは鋭くキレがあり、煌めいて良いパンチだ!
アリサヤは確実にパンチを決めて来る。
的確である。
そしてタイミングも確実に合って来ている。
カウンターを気を付けなければ…。
ココロはそう感じた。

一進一退のままラウンドは進む!
試合は後半に入った。

姫野の思惑どおりアリサヤのスタミナが切れて行くのを感じた。
狙いどおりだわ!

清はアリサヤの身体のスタミナを気にしていた。
トレーニングは続けていても、今まで素人のアリサヤの身体!
後半になるとスタミナが心配なのは事実だった。
しかしこうやってボクシングをさせてもらっているだけで
アリサヤに感謝している。
贅沢は言っていられない!
そろそろ姫野も勝負を掛けて来るだろう!

衝撃の展開がアリサヤを待ち受ける!

試合は後半戦に突入した。姫野のペースが上がる!
姫野がパンチを繰り出す!
アリサヤはそれにカウンターを合わせた!姫野がぐらつく!
チャンスだ!
アリサヤはパンチをたたみ掛ける!
しかしアリサヤの身体は悲鳴を上げていた。
過酷なトレーニング!
激しい試合!
一瞬アリサヤの動きが鈍る!
姫野はそれを逃さなかった!
姫野の必殺パンチ!ココロボンバーが炸裂した!
アリサヤの身体は宙に舞った。
今まで受けた事の無い衝撃だった!
アリサヤは倒れた。
姫野は勝ちを確信した。
今まであのパンチを受けて立てた人はいないわ。
手応えは充分だった。
〜痛いー!顔が腫れちゃうわ!話が違うじゃ無い!〜
心の中でアリサヤが泣き叫ぶ!
「ああああ…。まともにパンチを受けちゃったなぁ…。」
しかしパンチを受ける直前、咄嗟に芯を外していた。
それでもダメージは大きい!
〜もう嫌よ!このまま負けちゃいましょう!〜
心の中でアリサヤが叫ぶ!
「嫌だ!ここで終わりたく無い!アリサヤさんゴメンね。もうちょっとだけ我儘許してね。」
アリサヤは立ち上がった。

「嘘でしょう?あのパンチを受けて立ち上がるなんて…。」
姫野は動揺した。
アリサヤのスタミナは切れかかっているはず、おまけにあのココロボンバーを受けて
立ち上がるなんて!
姫野は得体の知れない恐ろしさを感じた。
「これで終わりよ!今楽にしてあげるからね!」姫野は渾身のパンチを放った!
そこにアリサヤのカウンターが炸裂した!
しまった!
姫野は心の中で叫んだぁあぁああああ。
姫野は倒れた。
井口やアニマル浜口を倒した、あのカウンターパンチが炸裂したのだ。
姫野は立てなかった。

アリサヤは勝った!
Rコーチが泣き叫ぶ!

〜アリサヤさん、ありがとう〜
清は心の中でアリサヤに言った。

さあ次は世界挑戦だ!
みんなが意気込む!

しかしアリサヤは引退した。
なんで?
アリサヤは伝説の選手になった。

レジェンドアリサヤの名は何時までもみんなの記憶に残った。
しかしみんなその後のアリサヤを見ることは無かった。

〜アリサヤさん、ありがとう!
思い残すことなくボクシングを出来たよ。
最後にパンチを貰っちゃって、痛い思いをさせてゴメンね。〜

「天国に行っちゃうの?
嫌よ!もうあなたがいない生活なんて考えられないわ。
清くん、行かないで!」

〜アリサヤさん、ありがとう!〜
〜でも、もう行かなくちゃいけない〜
〜アリサヤさんのお陰で、もう何も思い残すことは無いよ〜

「行かないで!」
アリサヤは泣いた。

清の魂は天国へと旅立った。

「不思議な少女だったけど、突然何処に消えてしまったんだろう?」
「そうよね。試合の後、突然引退を表明して、そなまま姿を消してしまうなんて」
ワタやんやRコーチ達はアリサヤの消息について話していた。

その横をアリサヤは通っていた。
しかし激しい練習!減量!その反動でアリサヤは激太りしていた。
そのすぐ横を通っても誰もアリサヤの事に気がつく者は居なかった。

井口は真面目に練習をし、今度世界挑戦に臨むらしい。
浩一は選手を引退し、トレーナーの道を歩んで行く。
井口とタッグを組んで世界王者に挑戦だ!
そしていつかミキと結ばれるのを夢見ていた。

姫野はユカ・メンドーサに挑戦したが敗れ、その後引退した。
イチゴはチヒロとの王座決定戦を制し、日本チャンピオンに輝いた。

〜みんな、ありがとう〜

アリサヤは清とボクシングをしていた頃を時たま思い出す事がある。
遠い昔のことのようだ。
辛かったけど、楽しかったなぁ〜
アリサヤは懐かしい思い出を思い出しながら新しい饅頭をまた口にした。

部屋にはボクシングをしていた頃の写真が飾ってあった。
伝説の選手 アリサヤ

終わり
関連記事

星に願いを

20140524220342359.jpg


なこは星空を眺めていた。
流れ星が線を描いて燃え尽きて行く。
「あ、また願い事言えなかった。」
なこはお母さんの病気が治りますようにと流れ星に祈るつもりだった。
またじっと空を眺めていた。
「あ、光った!お母さんが元気になりますように!」
言えた!
やったー!
その時、お父さんが
「なこ!いつまで外にいるんだ!早く家に入りなさい!
今日、母さんの退院が決まったよ。今度の日曜日退院だ!」
「えー?本当?」
なこは嬉しく涙が出て来た。
そして和かに微笑んでいるお父さんがいた。
関連記事

「ドイツ菖蒲の想い」

ドイツのある地方で
病弱な妻と2人ぐらしの夫婦がいました。
夫は妻を愛していました。
心のそこから・・・
夫は妻の好きな花をいつもベットのそばに飾って上げていました。
妻はいつも「あなたありがとう。」と
感謝の言葉を言いました。

20140524060304c4f.jpg



その度、夫は優しく微笑んで
「早く元気になるんだよ。」と言いました。
でも妻の病状はなかなか良くなりません。
夫は妻の病気が良くならない事は知っていました。
でも、なんとか生きてくれ!
少しでも自分のそばにいてくれ!
祈るような気持ちで花を飾りました。
ある日、彼が花を持って行くと
妻は元気に起きて、微笑んでいます。
あなた、今までありがとう!
妻は夫に口づけをしました。
夫は嬉しくて妻を抱きしめました。
しかし妻の身体はすり抜けてしまいます。
気が付くとベットには安らかな顔をした妻が眠っていました。
そして二度と目を開けることはありませんでした。
彼は泣きました。
泣いても泣いても涙が枯れることはありませんでした。
彼は妻の事を想いながら
妻が好きだった花を植えました。

気が付くと彼の家の周り一面
妻が好きだった花で埋め尽くされていました。

彼の想いを込め
その花はドイツ菖蒲と名付けられました。

201405240604125d3.jpg

「なこさんの作品」
関連記事

スーパーマンZ

みなさん、ご訪問ありがとうございます〜♪
「ボクシングを始めたアリサヤさん」の途中ですが、間に一作アップします。


なこはイタズラが大好きな天使。

ある日、神様が大事にしていた箱を神様がいない内にちょっとだけ触って見ました。

「いったいこの箱は何なんだろう?

いつも神様が大事にしているけど…。」

なこは箱を抱えて見た。

「よいしょっと。結構重たいなぁ。」

なこは一生懸命持ち上げた。

と、その時なこはバランスを崩し箱を落としてしまった。

箱は雲を突き抜け下界へと落ちて行ってしまった。

「あひゃ〜!どうしよう!」

そこに神様が戻って来た。

「なんじゃと?あの箱を落としてしまったじゃと?

このバカモーン!

あれは悪魔を閉じ込めていた箱なんじゃ!

もし愚かな人間が開けてしまったら大変な事になってしまうぞ!

人間が開ける前に回収して来るんじゃ!」

なこはこうして人間界にやって来るのであった。

20140518154223310.jpg



「あ〜あ、たいくつだなぁ〜。」

正夫はボーッと空を眺めていた。

すると何かキラリと光る物が!

それは段々大きくなって…。

ドスンッ!

正夫のすぐそばに落ちて来ました。

「うわぁっ!」

眠気も吹っ飛ぶほどの強い衝撃です。

落ちてき物体の周りがヘコんでしまってクレーターのようになってしまっている。

正夫は恐る恐る近づいて見ると箱のような物があるます。

すると中から声が聞こえます。

タスケテクレ…。

正夫は箱を開けて見た。

するとモクモクモク〜と黒い煙が舞い上がり大きな大男が飛び出して来た。

「ひぇえええええ」

正夫はビックリして腰を抜かしてしまった。

ウォォォォホホホホホ〜

オレサマハアクマダ!

タスケテモラッテレイヲイウゾ

オレイニヒトツダケネガイヲカナエテヤロウ

サア、ヒトツダケネガイヲイエ!

大男は自分を悪魔だと言い、箱から出してくれたお礼に願いを一つ叶えてくれると言う。

「ヒローになりたい!空が飛べて、力は人間の百倍!あるんだ!

そんなヒローになりたい!」

ソラヲトベテチカラハニンゲンノヒャクバイ!

ソレダトフタツノネガイニナッテシマウガ…

マアヨカロウ!

サービスデネガイヲカナエテヤロウ!

キェエエエエエ!

悪魔の指先から光線が正夫に注がれた。

コレデナガイハカナエタゾ!

ソレジャサラバダ!

悪魔は消えた。

「いったい今のは何だったんだ?

夢だったのか?

しかし落ちて来た箱はまだそのままある。

「ハハハ…。本当に願いが叶ってたりして…。」

正夫は空を飛ぶポーズをやって見た。

すると…。

シュパ!

凄い勢いで空に舞い上がった!

「凄い!凄いぞ!」

なんと正夫の願いは叶っていたのだった。

20140518154224bcd.jpg

正夫が調子に乗って空を飛んでいると、またしても空から何か舞い降りて来た。

可愛い天使か妖精のようだった。

「あーっしまった!もう開けられている!」

その妖精は空から落ちて来た箱を見て何か言っている。

「どうしたんだい?」

正夫は妖精に訪ねてみた。

妖精はびっくりした顔をして言った。

「私の事が見えるの?」

「そりゃそこにいるんだから見えるに決まっているだろう。」

正夫は憮然として言った。

「君は妖精なのかい?」

正夫は聞いてみた。

「私はなこ。天使よ。天国からやって来たの。」

「えー!天使?天国から来た?

さっきから悪魔だの天使だの色々降ってくるんだな。」

「えー!あなた悪魔を見たの?」

「あなた悪魔を見たの?」

なこは驚いて聞いた。

「ああ、空から箱が凄い勢いで落ちて来たんだ。

ビックリして覗いてみると箱があって

タスケテクレ〜って聞こえたから箱を開けたら

黒い煙と共に大男が出て来たんだ。
そして助けてくれたお礼に一つだけ願いを叶えてやろうって言うから

ヒーローにしてもらったんだ。

とても良いやつだったぜ!」

正夫は嬉しそうに言った。

「え?とても良いやつ?何だかイメージが違うわね。

それじゃ、その願いを叶えて上げる代わりに魂をよこせとか言われなかった?」

なこは言った。

きっとそうやって魂をもらう誓いをさせたに違いない!

「いいや、そんな事は言われなかったぞ。

空を飛べて、力は百人分と言ったら、それじゃ願いが二つになるけどオマケしてくれたんだぜ。

なぁ、良いやつだろう?」

そう言いながら正夫は大きな岩を持ち上げて見せた。

「そう、分かったわ。その力は人に見せちゃダメよ。

ヒーローは正体を現したらいけないんだから!」

「うん、分かった!」

正夫は嬉しそうに言った。

「しかし困っちゃたわ。

神様になんて報告しよう…。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「なんじゃと?すでに人間に箱を開けられていたじゃと!

このバカちんがぁー!」

なこは天国に戻って神様に報告した。

「バカモンとかバカちんがー!とか

最近神様、ヒステリックなのよね…。」

なこが言うと。

「なんじゃと?聞こえておるぞ!」

そこにはまだ神様がいた。

「ひぇえええええ!お許しを〜!」

「お前は人間界に降りて悪魔の行動を監視するんじゃ!

そしてその正夫とか言う男の監視も忘れるんじゃ無いぞ!

さあ、行くが良い!」

なこは神様の命令を受けて再び人間界に舞い戻った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


正夫は学校に登校した。

実は正夫は今まで学校に行くのが憂鬱だった。

学校には正夫を虐める不良グループがいて正夫はイジメられていた。

いつもヘラヘラ笑って耐えているけど、それがまた不良達には気に食わないらしい。

あいつらを殺してやりたいとさえ思っている。


学校に行くと早速不良達に呼び出された。

「おい、正夫!今日パンを買う金を持って来るのを忘れたんや。

スマンけどちょっこっと貸してくれんかの?

友達やろ?頼むよ。」

いつもそうやって正夫の小遣いを巻き上げる。

今まで返して貰った事は一度もない。

もちろん返すつもりなんてこれポッチも無い!

正夫はヘラヘラ笑っている。

いつもは怖くて、顔が引きつって笑っているように見えるだけなのだが今日は本当に笑っていた。

「いつもいつもヘラヘラ笑っていやがって!何考えているんだよ!」

不良の1人が殴りかかって来た。

正夫は軽くよけ、ポンッと背中を叩いた。

不良は吹っ飛び壁に激突した。

これには正夫の方が驚いた!

軽く叩いただけなのに…。

不良は壁に激突して伸びている。

「あ悪魔や〜!」

不良達は正夫を恐怖の目で見て逃げ出した。

「悪魔って!失礼な奴やな!僕はヒーローになったんやで!」

しかし何で今まであんな奴らを怖がっていたんだろう?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


なこは正夫を見つけた。何か作っている。

「正夫さん、お久しぶり〜♪何を作ってるの?」なこは正夫に声をかけた。

「あ、天使さん!今ヒーローに変身した時のコスチュームを作っているんだ。」

ベレー帽にサングラス。マフラーにお母さんのブーツ!

とてもヒーローって言う感じでは無い!

「そうだ、天使さん!ヒーローに変身する時のコスチューム!

何か考えてよ!正体をバラさない方が良いって言ったのは天使さんなんだからね。」

「む〜ん。仕方ないわね。」

なこがお尻を振るとキラキラキラ〜と輝き、正夫はカッコいいヒーローのコスチュームに変身した。

「ワッ、カッコ良い!」正夫は大喜びだ!

「良い?変身する時はなこ!って叫ぶのよ。分かった?」

これで変身する時はなこを呼ぶ事になる。暴走はしないだろう。

「うん、分かったよ天使さん。」正夫はカッコ良いコスチュームが気に入って嬉しそうだった。

「それと天使さんじゃなくて、なこちゃんって読んでちょうだいね。」

「うん、分かったよ。天使さん、いやなこちゃん!」

なんだかなこも嬉しくなっていた。

20140518154226080.jpg

正夫は有頂天だった。何たってヒーローに変身する時、わざわざ着替えなくても

「なこ!」って叫ぶだけでカッコ良いコスチュームに変身出来るんだから本当に変身した見たいだ!

あ〜早く事件が起こらないかな?

その時だったTVでサラ金に強盗が押し入り人質をと取って立てこもっているとニュースで報じている!

それだ!正夫は「なこー!」と大きな声で変身した。

見事にカッコ良いコスチュームに変身した正夫!

シュッパっと空を飛び立てこもっているサラ金に到着した。

正夫のヒーローデビューである!正夫は人質を救い出し事件を解決出来るのか?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


その男は関西の下町て鉄工所を経営していた。

従業員数人とコツコツと誠実な仕事をこなしていた。

ある時その鉄工所に有利な提携の話が舞い込んで来た。

安定した受注!有名大手会社との提携の話だった。

「お宅の誠実な仕事ぶりを見て、是非提携させて欲しい。」と言われた。職人堅気に尽きる。

男は大手有名会社と提携した。書類にも印鑑を押し無事提携完了!

これで男の鉄工所は安泰のはずだった。しかし受注は入って来ない!

委託金は払っている。その額も工場、家屋敷全てを抵当に入れての借入金だ!

男は担当者に問い合わせた!するとうちにはそんな人間はいない!と言われた。

男は目の前が真っ暗になった。騙されていたのである。

その男がインチキファイナンスの関係者であるらしいと男に情報が入った。

確かに間違いない!男は確信した。

男は自分の鉄工所でライフルを作った。超強力エアガンである。

特殊バネを使った破壊力抜群のエアガンである。本物のライフルと遜色ない!

鉛の弾も特注だ。男はそのエアガンを持ってインチキファイナンスに乗り込んだ!

「俺の財産を返せ!」男はエアガンを撃ち放った!

向かいの建物の壁に大きな穴が空く。みんなは震え上がっている。

そこに正夫扮するヒーローが到着したのだった。


サラ金の周りは警察機動隊で取り囲んでいる。

正夫が近づくと「君は誰だね。変な格好をして!危ないからこのロープより中に入っちゃダメだ!」

「僕はスーパーヒーロー!スーパーマンZです!」正夫がそう言うと「分かった分かった!危ないから

下がってなさい!」と警察官は取り合ってくれない。

ライフルを持った犯人は社長室に入った。

いた!こいつだ!俺に提携話しを持ちかけて来た奴は!

「遂に見つけたぞ!良くも騙しやがったな!さあ!金を返せ!」男はライフルを構えて迫った!

「何を言っているんだ?何のことかサッパリ分からんぞ!」提携話しを持ちかけた奴は恍けている。

「クソッバカにしやがって!」男は引き金を弾いた!忽ち社長室は血の海と化した。

悲鳴が響く!

2014051819161605c.jpg

焼けになった男はライフルを発射し続けた!そして窓際に立った処を狙撃班から射殺された。

痛ましい事件だった。正夫は結局何も出来なかった。

サラ金のビルの上では悪魔がリンゴを齧りながら、その様子を見ていた。

フフフハハハハ…。

鉄工所では、そんな提携話しも無かったし、工場家屋敷も抵当には入っておらず

借入金もなされて無かった。もちろん委託金なども払われた形跡は無かった。

悪魔はリンゴの食べカスを捨て、飛びだって行った。

そして駅の繁華街でも無差別通り魔事件が起こっていた。

なんと言う事なの!あれもこれも悪魔の仕業だわ!

それにもっともっと増えるわね。なんとかしなくちゃ!

なこは唇を噛み締めていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


異常犯罪は学校にも及んでいた。

いつもイジメられていた生徒が虐めていた不良達を刺した。

「ハアハアハア…。僕を虐めていた奴は許さない!みんな殺してやる!」

教室は血が散乱した。虐めはエスカレートしていた。

抵抗しない内気な子を寄ってかかって虐めた。

不良達は「お前なんて生きてる価値ないんだよ!自殺しろよ!」そう言いながら殴り付け蹴飛ばした。

その生徒は蹴られ蹲ったかと思うと、突然ナイフを振り回し不良達を刺しまくった。

校舎の上では、悪魔が踊っていた。そうだ!やられたらやり返せ!

こんな奴らは生かしておくな!自殺するくらいなら、こいつらを殺っちまえ!

ギャハハハハハハ〜♪

早く悪魔を退治しなくちゃ!なこは自分がした事の重大さを痛感した。

涙がこぼれ止まらない。

「神さま…。」

〜これが悪魔の恐ろしさじゃ!人の心の弱みを突き操るのじゃ〜

日本各地の学校で同様の事件が起こっていた。

虐められっ子の反撃!虐めていた不良を襲う。ある者はナイフで刺す。ある者は椅子で殴り付ける。

ある者は電車が迫るホームで後ろから突き落とす。殆どの子が自分が自殺するはずの子だった。

正夫は信じられなかった。

自分もイジメられていたので気持ちは良く分かる。

しかし現実にこんな事が起こるとは…。しかも日本各地で同じような事件が起こるとは…。

なこは遂に悪魔を見つけた。「あなたは何て事をしてるの?」

〜虐められている奴に反撃させて何が悪い?〜

泣き寝入りして、怨みを抱いたまま自殺する方が良いと言うのか?

俺は真っ平だ!そんな不条理な事があって良いのか?

虐める方は虐められている物の痛みが分からない!

これでイジメも減るだろう!

俺は悪魔のクセに良い事を行なっているんだぞ!

お前らに感謝こそされても、文句を言われる筋合いは無い!

ギャハハハハハハ〜!俺は俺のやりたいようにやる!邪魔をするな!

悪魔はそう言い残し、空の彼方へ飛んで行った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


正夫は誰もいない高層ビルの屋上にいた。

空を飛べる力を授かった正夫にとってはこう言う処に来るのも容易い事だ。

しかし正夫は特殊能力を得ても、何も活用出来ない自分を実感していた。

数々の事件は起こっているのに、ヒーローとして何も出来ない。

そんな自分に苛立っていた。

「あ、こんなとこにいた。」誰かが声をかける。こんな処で誰だ?

天使のなこだった。「全く酷い事件が続くよね。」

なこはもう大変と言った表情で言う。

しかし正夫は虐められっ子が反撃する事に爽快感を感じていた。

虐められたことがある人間じゃ無いと分からない。

「この状況を解決するにはあなたの力が必要なの!お願い力を貸して頂戴。」

なこは正夫に頼んだ。

誰れも味方がいないなこにとって、正夫の力は頼りだ。

しかし悪魔の仕業はどんどんエスカレートして行くのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


遂に悪魔は国と国の争いにまで発展して行く。

領有問題で一触即発のレベルまで達していた。このままでは世界大戦に発展しかねない!

なこは神様に助け求めた!

〜そうじゃのう…。イジメも大夫減って来たしのう…。

溢れかえっている人間どもをもう少し減らしたかったんじゃが…〜

なんと!神様らしくない言葉…。

「ひょっとして悪魔を操っておられるのは神様なのですか?」

〜ホォホホホホホ…良いか!人間どもは本来悪の塊なのじゃ!

こうして我々が管理してやらないといけないのじゃ!

放っておくとドンドン増えて行きこの星を蝕んで行く。

もうかなり増えすぎておるので、少し減らそうと思っておった処じゃ。

しかし今回はこの辺にしておこう〜


神様は杖を振り降ろすとピカ〜っと光り、悪魔が吸い寄せられあの箱の中に閉じ込められた!

クソー!マタジジィノシワザダナ!ダセー!ダシテクレー!

悪魔が箱の中で泣き叫んでいる。

なこは神様の事が恐ろしくなった。

「神様、神様のお名前は何と言われるのですか?」なこは聞いてみた。

〜何故そんな事を聞くのじゃ!まあ良かろう。

今じゃ、神様と言われておるが、昔はサタンと言われておった時もあったかのう…。〜

20140518161744a19.jpg

なんと言うことだ!私もこの神様に操れれていただけだった。

なこは天使を辞め地上に降り、人間となった。

そして特殊能力も無くなってしまった正夫の元に行った。

「あ、天使さん!僕もうそれを飛べなくなってしまったんだ。」正夫はなこに言った。

「ううん。空なんか飛べなくったって良いじゃない。私も天使を辞めて人間になったのよ。

これからもよろしくね。」

20140519210200653.jpg


なこは正夫の腕を組んで歩き出した。これからは人間として正夫と共に暮らして行こう。

辛いことも哀しい事も正夫と共に乗り越えて行こう。人間だって捨てたもんじゃない。

「ねえ、正夫くん、私のこと好き?」

「え?ええええ!だ、大好きっす!」

ふふふ…ありがとう。

おわり

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

おまけ

なこは正夫と一生寄り添い生きた。ふたりは結婚し、子供を授かり、孫も出来た。

正夫も歳をとり、旅立つ。

「君のお陰でヒーローにもなれたし、楽しい人生だったよ。ありがとう。」

最後にこの言葉を残し旅立った。

なこは泣いた。そしてなこも孫達ちに囲まれ、幸せな人生を閉じた…。

なこは目覚めた。そこには神様がいた。

〜どうじゃったかな?人間の一生は?凄く短く儚いものだったじゃろう。。。

あんなに短い一生の為にあせくす働いておるのじゃ…人間は。

そして死ぬ時に楽しい人生だった充実した人生だったと思って死ねるように頑張っておるのじゃ。全く儚いのう〜

神様はそう呟きながら日課の散歩に出かけた。



※目が疲れると言うご意見がありましたので、行を空けて見ました。
関連記事

ボクシングを始めた少女 その5

みなさん、ご訪問ありがとうございます〜♪

チヒロは絶好調だった。
この日はまゆ子も見に来てくれていた。
顎のギブスが痛々しい。
スピード、パンチの切れ共に申し分なかった。
この調子なら日本チャンピオンにも勝てそうだった。
あのスケ番崩れが良くここまで成長した物だとまゆ子は思った。
チヒロの武器はここ一番と言う時の集中力だ。
チャンスを絶対に逃さない!
またまゆ子譲りのパンチ力も健在だ!
何故、デビュー戦にこれ程の強敵を選ぶのだ?
正直デビュー戦で戦う相手では無い!
チヒロは試合数こそ少ないが試合内容は相手を圧倒しての見事なKO勝ち
なのである。
それを知らないわけでは無いだろう?
ひょっとしてそれ程自信があるって言う事なのか?
まゆ子はアリスの事を思い出した。
とてもあれがデビュー戦とは思えなかった。
そんなに王拳ジムの選手達は強いのか?
だとしても、今のチヒロ相手に勝てるとは思えない。

デビュー戦を明日に控えた日。
ワタやんはお墓参りに来ていた。
「かあちゃん、ミキを勝たせてやってくれ…。お願いだ!」
拝んでいるワタやんの後ろで
「こらこら!ワテはまだ生きれるでぇ!」
「ぎゃぁああああ!冗談だってばッ!」
いつも仲の良いワタやん夫婦である。


なこは女子ボクシングの試合の取材に来ていた。
初めて見るボクシングの試合!
なんでもデビューから3戦連続KO勝ちの凄い選手がいるらしい。
しかも相手は今日がデビュー戦とのこと。
それじゃ今日もまたKO勝ちで決まりよね。
実際なこは華々しい戦歴を作るために弱い相手と試合を組んでいると思っていた。
実際3戦連続KO勝ちなのに、今日がデビュー戦の相手と戦うのっておかしくない?
そう思っていた。
注目の試合は3試合目だった。
注目の選手、チヒロ選手だ!
キリッとしていて中々凛々しい。
そして対戦相手の選手は…?
まだ高校生見たいだ。
まだ可愛らしさが残っている。
それに緊張感が漂っている。
これじゃ可哀想過ぎるわ。
あまりに力の差があるように感じ、なこはどう言う風に記事に
まとめれば良いのだろう?と思っていた。

遂にミキの試合の日はやって来た。
「ミキちゃん、頑張るのよ!」アリスはミキに声をかける。
かなり緊張しているのが伝わってくる。
なんとかリラックスさせなくちゃ。
「浩一くん、ミキちゃんに声をかけてやって。」
アリスは浩一に言った。
今のミキには浩一の言葉が1番元気が出るだろう。
「ミキちゃん、落ち着いて、焦らず相手を良く見て行くんだよ。」
浩一は緊張しているのミキに声をかけた。
「あ、浩一くん!」ミキの顔が明るくなったのをアリサヤは感じた。
やっぱり今のミキには浩一が合ってるんだね。
ちょっと寂しく感じるアリスだった。
セコンドにはワタやんとRコーチが付いている。
チヒロはクラッシャーの後輩だ。
クラッシャーへの思いをミキにぶつけて来るだろう。
ミキちゃん、頑張るんだよ!

チヒロの調整は上手く行った。
誰が相手でも負ける気がしない、相手のミキと言う選手を倒し
アリスを引き摺り出し、クラッシャーの仇を討つ事しか考えていない。
クラッシャーも見に来てくれいる。
カーン!
ゴングがなった。
チヒロはデビュー戦で緊張しているミキに襲いかかった。
「ミキ!ジャブやジャブで攻めて行け!」ワタやんの声がこだまする。


落ち着け!落ち着くんだ!ミキは自分に言い聞かせていた。
相手が強敵なのは知っていた。
しかしそんな泣き言は言ってられない。
日々の辛い練習を思い出すんだ。
ミキはジャブを繰り出す。
チヒロはそれをブロックし、力強いパンチを放つ!
ミキは距離を取り、それをかわす。
上手い!
今日がデビュー戦だけど、幼い頃から基礎を叩き込めれてるっと言った感じだわ。
チヒロは思った。
まゆ子さんの仇を取ると言うより、この1戦を全力を尽くさないとヤバイわ。
息つく間も無い程の攻防!
打っては離れ、離れては打つ!ミキ。
ジャブをブロックしグイグイ間合いを詰めて来るチヒロ!
硬さも取れ、ミキは第1ランドを互角で終えた。
「中々良い動きよ。ジャブを的確に狙って行くのよ。」Rコーチの指示が飛ぶ!
ミキは浩一の姿を探した。
いた!リングそばで腕を上げて声援している。
ミキは嬉しかった。
201405180731406b9.jpg


ゴングと共に第2ラウンドが始まった。
「頑張れ!」ワタやんは祈る思いで声をかける!
20140518065550f47.jpg

ミキの動きは良かった。
浩一との練習でメキメキ上達して行った感じだ。
あいつはトレーナーの才能があるのかも知れんな。。。
ミキのジャブが的確にチヒロを捉える!
チヒロもミキのジャブを跳ね除けボディーから顔面へと打ち込む!
あーっ、良いパンチがミキに当たった!
フラつくミキ!
一気にたたみかけて来るチヒロ!
ミキは防御しながらもコーナーに追い詰められた。
相手のパンチに合わせるんだ!
タイミングを測るんだ!
浩一との会話が頭をよぎる。
ロープを回りなんとかコーナーから抜け出すミキ!
そしてチヒロのパンチに合わせパンチを出す!
カウンター気味にミキのパンチがチヒロを捉える!
一進一退のままラウンドは進む!
負けられない!まゆ子さんの為にも負けられない!
チヒロはつぶやく!
絶対に勝って見せる!


ユカ・メンドーサは世界チャンピオンの座に着いていた。
過酷な減量!厳しいトレーニング!
女子ボクサーの憧れの的だ!
この日もタイトルマッチを終え、防衛も10回を超えた。
次のタイトル戦はジャパンのジムからオファーが来ていた。
ジャパン?
ボクシング選手にとって日本人とのタイトルマッチは魅力だった。
兎に角ファイトマネーを吊り上げて破格の金額を提示して来るのだ!
ユカ・メンドーサは密かに来日していた。
そして幾つかの試合を観戦した。
日本はまだまだ女子ボクシングに関しては後進国だ。
そしてこの試合も会場の片隅で観戦していた。
この国は姫野ココロだけだと聞いていたがこの選手達も中々やるじゃ無い。
でも、まだ私に挑戦するのは早過ぎるわね。
そう思っていた時、アリサヤとすれ違った!
その時、お互い何かを感じた!
強い者同士が感じ合う強い何かを!
日本でこの感触を感じるなんて思ってもいなかったわ!
あの子は誰なの?
すぐに調べさせた。
20140518064042c67.jpg

アリス!王拳ジムのアリス!
「ふふふ…日本に来た甲斐があったみたいだわ。」
ユカ・メンドーサはポツリと洩らし会場を後にした。

試合は白熱していた!
ミキは浩一のアドレスを思い出す。
〜良いかいパンチを打つときこうやって拳を回転させるんだ!
相手のパンチに合わせ当たる寸前に回転させる!
するとの威力は倍増するよ!
名付けて必殺コークスクリューカウンターパンチ!
これがミキの必殺パンチだよ。

そう、私には必殺コークスクリューカウンターパンチがある!
チヒロはミキをコーナーに詰め
そして思いっきりパンチを打ち込む!
ミキもそれに合わせて必殺コークスクリューカウンターパンチを放つ!
会場が一瞬静まりかえる。
201405180722266df.jpg


試合はKOで決まった!
「良く頑張ったよ。デビュー戦にしては上出来だよ。」ワタやんが言った。
ミキはずっとうつむいていた。
そして浩一の顔を見ると泣き崩れた。
「ゴメンね。ゴメンね。浩ちゃん、ゴメンね。」

チヒロはパンチを振り下ろす!
ミキもそれに合わせパンチを放つ!
しかしミキのパンチは微かに外れ、チヒロのパンチが炸裂した。
ミキは倒れた。

「大丈夫だよ。勝負は時の運さ。次はきっと勝てるよ。」
浩一は優しく言った。
「うん。」ミキは泣きながら笑った。

20140518085259443.jpg





関連記事

ボクシングを始めた少女その4

みなさん、ご訪問ありがとうございます〜♪
かなりの長編になってしまいましたね


チヒロはまだ信じられなかった。
あのクラッシャーデビルが負けるなんて。
チヒロにとってクラッシャーデビルは憧れの的だった。
どんなに観客からブーイングを受けても自分を貫く強さ!
姫野ココロ戦でも判定は負けてしまったけど、内容的には
絶対クラッシャーデビルの方が押していたと思う!
あの判定は納得出来ない!
チヒロの中ではクラッシャーデビルは無敗のままだった。
そのクラッシャーデビルがまさかのKO負けだなんて…。

クラッシャーデビルはチヒロを妹のように可愛がってくれた。
ジムでは何時も練習を見てくれた。
憧れの先輩だった。
そのクラッシャーデビルが再起不能!
顎の骨を砕かれ、もうボクシングは出来ないだろうと医師から宣告された。
「今まで多くの選手を再起不能にしてしまったから自分に跳ね返っちゃたんだね。」
まゆ子は笑って見せたが、涙が頬を伝っていた。

許せない!
自分がきっと仇を打ってやる!
チヒロは唇を噛み締めた。
チヒロはデビューして3戦全勝だった。
20140512221048494.jpg

昔、チヒロはろくに学校にも行かずスケ番気取りで繁華街をうろついていた。
そこで地元のレデースと揉めた!
レデースの仲間はあっという間増え、チヒロは囲まれた。
絶対絶命のピンチだった。
チヒロは殴られ蹴られ、ズタズタにされた。
もうダメだと思った時、チームの一人が止めに入ってくれた。
「もう、その辺で良いだろう!これ以上やったら死んじゃうよ!」
それがまゆ子だった。
「さあ、気を付けて帰んなよ。」
その後、まゆ子はチームと揉める事になるのだった。

チヒロは打倒アリサヤに燃えた!
今までの何倍も練習を重ねた。
そんなチヒロにアリサヤが通う王拳ジムのミキとの試合の話が持ち上がった。
チヒロはアリサヤとやれせてくれと頼んだがダメだった。
会長は「そんなにクラッシャーの仇が打ちたいんだったら
先ず、そのミキと言う選手をやっつけてアリサヤを引きづり出すんだな!」
と言った。
なるほど、確かにその通りだった。
こうしてミキとチヒロの試合が組まれた。


姫野ココロはレデース時代を思い出していた。
仲間達を統一して、他のレデース達と張り合っていた。
そして愛する彼。
彼の名前は高野のぼる。
フリーのカメラマンだった。
彼はレデースを特集して写真集を出すと言う夢を追いかけていた。
そして彼は姫野のレデースに接触して来た。
のぼるはレデースのリーダー姫野に心を奪われた。
姫野の表情ひとつの一つが芸術だった。
その美しさ!
ふたりは次第に惹かれ合い恋に落ちた。
姫野は幸せだった。
人生がこんなに素敵なものだとは思わなかった。
しかし幸せは長く続かなかった。
彼にアフガニスタンの現状を写すと言うビックリプロジェクトが舞い込んで来た。
成功すれば、一気に彼は有名カメラマンの仲間入りだ!
姫野は彼の将来の為に身を引いた。
しかし彼は姫野のそんな気持ちを理解してくれなかった。
のぼるは荒れた!
姫野に棄てられたと思い込んだ。
そんな気持ちのままのぼるはアフガニスタンに旅立った。
そしてのぼるは事件に巻き込まれて死んだ。
現地のスタッフと共に車で移動中銃撃されたのだ。

その後、アフガニスタンから彼からの手紙が届いた。

拝啓、ココロ
元気に暮らしてますか?
ここアフガニスタンは何も無い所です。
全てが荒れ果てている。
ただただ青い空。
この空が君の住む街に続いているのだと思いながら
毎日空を眺めています。
撮影は順調に進んでいます。
早く帰って、君に会いたい。
僕は君の心に気付かなかった。
そして荒んだ気持ちのままここに来た。
ここは何も無い所。
想うのは君の事ばかりだ。
そして僕は君の本当の気持ちに気が付いたんだ。
僕は馬鹿だった。
君の優しさに気付かなかった。
ココロ、ごめんな。
今、僕は君への想いを込めて写真を写しています。
自分でも良い写真が撮れていると思う。
君の事を想いながらカメラを構えると、被写体が輝いて見えるんだ。
帰ったら君に打ち明けたい。
僕の君への想いを…。

それでは、身体に気を付けるんだよ。

ここで手紙は終わっていた。
全く馬鹿なんだから!
自分が死んじゃったら何にもならないじゃ無い!
私はずっと待っていたのに…。
ココロの頬に涙が流れた。

私が今ボクシングをやってるって言ったら彼驚くだろうなぁ〜。
ココロはグローブを取り、サンドバックを叩き始めた。

全く馬鹿なんだから!
ココロは泣きながらサンドバックを叩いていた。


なこは新人の新聞記者だった。
短大を卒業し憧れのマスコミ業界に入社!
しかしなこが配属されたのは潰れかけのスポーツ新聞社。
半分はイヤラシイ広告で成り立っているスポーツ紙だった。
なこは女子ボクシングの取材に同行させられた。
「え?ボクシングって女子もあるんですか?」
なこは驚いて編集長に訊ねた。
「ああ、女子にもあるで!まだまだマイナーやが、
今年は結構粒が揃っているそうや。」
「粒が揃っている?」
なこは驚いて聞いてみた。
「べっぴんさんが多いって事や!
ウチはウチで他所と違った視点で女子ボクシングを取り上げて行くんや!」
編集長の思いはちょっと歪んでいる気はするが
女子ボクシング…。なこは凄くウキウキしていた。
一体どんなんなんだろう?
そしてなこは驚き、女子ボクシングにハマって行くのである。
先ずは女子ボクシング界の第一人者 姫野ココロの取材に同行した。
これがボクサーなの?
綺麗な顔立ち!
研ぎ済まれた身体!
これはきっと人気が出る!
編集長の狙いは当たっていると直感した。
なこは女子ボクシングに魅了された。
なこは姫野の特集記事を書いた!
なこの記事は当たった!
反響は凄かった。
なこの所属するスポーツ紙「エロチカスポーツ」は売れた!
編集長は大喜びだ!
「なこ、なかなか良い記事だ!この調子で良い記事頼むよ!」
なこは「エロチカスポーツ」に入って初めて喜びを噛み締めた。
「なこさん、良かったっすね。」
カメラマンのりょーごろーが言った。
「りょーくんの写真が良かったからよ。」なこはりょーごろーに言った。
りょーごろーは満更でも無い顔で笑った。


ワタやんは落ち着かなかった。
可愛い娘のミキのデビュー戦が決まったのだ!
ミキのボクシングセンスは親の目から見てもなかなかな物だと思う。
高校総体優勝のイチゴにも引けを取っていない。
「もっと早く!あなたの武器はスピードよ!」Rコーチが叫ぶ!
スパーリングパートナーのイチゴをコーナーに追い詰める。
「もっと連打よ!連打!」
しかしイチゴのカウンターをもらって倒れてしまった。
流石高校総体チャンピオンのイチゴである。
「脇が甘いのよ!もっと肘を引いて打たないから、相手に反撃のチャンスを与えてしまうのよ!」
Rコーチが嘆く。
ミキはデビュー戦が決まったのに、ここに来てスランプに陥っていた。
何が原因なんだ?
ワタやんは考えた。
デビュー戦を前にプレッシャーなのか?
父親としてトレーナーとしてどうアドバイスをすれば良いんだ?
勿論これまでも色々アドバイスはしている。
しかし上手くいかない。
良い所まで追い詰めるがいつも最後は倒されてしまう。

アリサヤは見ていた。
ミキには追い込んだ時に欠点がある。
それはRコーチが言うように追い込んだ時に脇が空くのだ。
それで逆転を喰らってしまう。
どうすれば良い?
その時だった。
浩一が言った。
「ミキちゃんはコーナーに追い詰めた時に焦り過ぎるんだよ。
コーナーに追い詰めた時、逆にワザと間合いを開けるんだ。
そして仕切り直しするんだよ。
僕もパンチ力が無いから、コーナーに詰めたりすると焦っちゃうんだよね。」
ミキは目から鱗が落ちた感じがした。
まさにその通りだった。
パンチ力がある者には分からない心理だ。
殆ど話したことが無い浩一の言葉。
話した事が無い浩一に自分の心理を言い当てられた。
ミキは驚いて浩一を見つめていた。

早速練習に取り入れた。
ジャブジャブ!
フック!ストレート!
スパーリングパートナーをコーナーに詰める
そしてスーッと間を開ける!
スパーリングパートナーが何事かと顔を上げたところをミキのフックが飛んで来た!
スパーリングパートナーは堪らず倒れた!
殻を一つ破った瞬間だった。

それからもミキは浩一と頻繁に話をしている。
浩一の話はミキに当てはまる事ばかりだった。
ミキが今まで感じていた事、悩んでいた事が次々に解決されて行く。
スパーリング中の考え方も参考になった。
そしてミキは浩一からカウンターの狙い方も聞いた。
なるほど…。
ミキはカウンターを取り入れた練習を開始した。
スパーリングパートナーがパンチを放ったのに合わせる!
初めは中々上手くいかなかったが、段々タイミングが分かって来た。
もちろん今までにもカウンターは練習したことはある。
だけど、どうも自分の性格に合わないような気がしていた。
しかし浩一の話は分かり易く、またその気にさせるのが上手かった。
浩一が出来るなら自分にもと言う気がしてくるのだった。

ミキはスランプから脱出した。
ワタやんの目からも動きが全く違って見えた。
これなら行けるぞ!
しかしワタやんが気になるのは、ミキと浩一の仲だ!
浩一!ワシのミキに手を出したらコンクリート詰めにして
大阪湾に沈めたるぞ〜!
ワタやんは心の中で叫んで、浩一を睨みつけていた。

ワタやんの心配をよそにミキのデビュー戦は近づいて来た。
ミキ対チヒロ!
ふたりの戦いはどうなるのだ?

関連記事

ボクシングを始めた少女ー その3

みなさん、ご訪問ありがとうございます。
遂にアリスのデビュー戦!

Rコーチはクラッシャーデビルについて調べていた。
調べれば調べる程、凄い選手だった。
10戦9勝1敗7KO!
凄いKO率だ。
唯一の敗戦は姫野ココロ戦だった。
フルラウンド激闘の末、判定で敗れた。
姫野が苦戦した唯一の試合だった。
そうかあの姫野を追い詰めるなんて、凄い選手なのね。
そんなRコーチの憂いをよそに試合は始まる。

「良い?アリスさん、先ずは相手を観測して自分の合間を掴むのよ。」
Rコーチがアリスにアドバイスを送る。

アリスは震えていた。
そんな…。私が試合だなんて…。
しかもあんなに恐そうな人…。
心配ないよ!清が言った。
久しぶりの試合だなぁ…。この緊張感堪らないよね。
後は僕に任せてね。
アリスは心の中で清と会話していた。
私、痛いの嫌だからね。
分かってるよ。



ゴングは鳴った。
アリスのデビュー戦。
相手はクラッシャーデビル!
ハードパンチャーの強敵だ。

アリスはジャブを出しながら距離感を計る。
強打のクラッシャーがじっと睨み付ける。
まだパンチを出さない。
不気味な感じだ。
パワーが売り物のクラッシャーがジリジリと距離を詰める。
アリスはジャブを放ちながら距離を取る。
クラッシャーがグイグイ前に出てプレッシャーをかける。
アリスはジャブを放ちながらも距離が詰まって来るのを感じる。
なんて強引なプレッシャーなんだ。
ついにクラッシャーがパンチを放つ!
ドスンッ!ガードの上からでもお構いなしだ!
正に大砲と言う感じだ。
ドスンッ!ドスンッ!
パンチを連打する。
アリスは堪らず距離を取る。

アリスは巧みにステップを踏む。
ジャブを的確に当て、すかさず離れる。
しかしクラッシャーがそんなのお構えなしにグイグイ前に出て
アリスをコーナーに詰める。
コーナーに詰めると思いっ切りパンチを繰り出す。
巧みにかわし、コーナーから逃れるアリサヤ。
「もっと回って!回って!コーナーを背負わないで!」
Rコーチが声を張り上げる。
そこで1ラウンド終了のゴングが鳴った。

「やはりプレッシャーをかけて来るわね。
ロープを背負わないように気を付けて!」
Rコーチが的確に指示を出す。
「距離感は掴めそう?」
「ハアハア…。凄いプレッシャーとパンチです。
全く力任せにパンチを打って来る。正に名前通りですね。」
第2ラウンドが始まった
ゴングと同時にクラッシャーが飛び出して来た。
ブンッ!ブンッ!とパンチを振り回す!
アリスはフッと風のように身を交わす。
しかしクラッシャーの体がそれを阻む!
またしてもコーナーに追い込まれる!
「コーナーを背にしない!」Rコーチの声が響く!
アリスはコーナーに詰められ防御に徹している。
クラッシャーは防御の上からでもドスンッ!ドスンッ!とパンチを繰り出して
防御を吹き飛ばす気でいる。
クラッシャーが防御を吹き飛ばそうと渾身のメガトンパンチを繰り出した時
アリスのカウンターが炸裂した!
クラッシャーはアリスにもたれ掛かるように崩れ落ちた。
Rコーチは絶句した!
あんな見事なカウンターは見た事が無い!
清がモンスター井口やアニマル浜田を倒して来たカウンターパンチだった。
それはアリスの身体になっても健在だった。
Rコーチは半狂乱になるほど感激した!
「凄い!素晴らしい!
姫野ココロさえ苦戦したクラッシャーデビルを2ラウンドKOだなんて!
それもデビュー戦でよ!
全く信じられないわ!アンビリバボーよ!」
 
まゆ子は孤独だった。
小さい頃から貧しく、給食費も払えず
みんなからイジメられていた。
まゆ子は当然のように愚れた。
信じるもなのは何も無い。
とても仲間と呼べるような連中じゃ無い奴らと
つるんでいた。
学校に対しても世間に対しても突っ張っていた。
そんな中、些細な事で仲間と揉め、まゆ子は孤立した。
まゆ子はグループから追われんる身になった。
本当に些細な事だった。
レディースのリーダーの彼氏に色目を使ったとか
言いがかりを付けられた。
もちろん全く身に覚えの無いことだ。
まゆ子はグループの奴らから取り囲まれ、逃げ場の無い!
腕っ節に自信のあるまゆ子は闘った。
しかし多勢に無勢だ。
奴らに抑えこまれた時、ひとりの人影が!
なんと別のレディースのリーダー的存在の 姫野ココロだった。
彼女の可憐な身のこなし!
速いパンチ!
目の前でバタバタ倒れて行く!
なんと十数人いた奴らを全て倒してしまった。
「何で助けてくれたんだ。」まゆ子は姫野に聞いた。
「前からあんたの事は噂で聞いていたからね。
引退前に1度見ておこうと思ったのさ。
そしたら、さっきの現場に居合わせてしまった。
ただそれだけだよ。」
姫野は何事も無かったかのように言った。
「引退?あんた引退してなにするんだい?」
まゆ子は姫野に聞いた。
「実は女子ボクシングにスカウトされたのさ。」
姫野ココロはまゆ子に夢を語った。
そして女子ボクシング界にデビューした。
そうか…。ボクシングか…。
まゆ子も追うように女子ボクシング界に入って行った。

姫野ココロはデビューした。
可憐な身のこなし、持って生まれたボクシングセンス!
姫野は勝ち進んだ。
しかし姫野の前に大きく立ちはだかる壁があった。
それは日本の女子ボクシング界を牽引していた
ファイティングR!
またの名をカミソリお龍!
若き日のR コーチだ!
カミソリお龍の人気は凄かった。
並みいる強豪をなぎ倒し、世界王者に1番近い日本女子選手だった。
そのカミソリお龍との対戦が決まった。
圧倒的人気のカミソリお龍!
姫野ココロは闘った!
鬼より恐いと言われていたカミソリお龍!
しかし試合は姫野が勝利した。
可憐な身のこなしでカミソリお龍を翻弄した!
全盛期を過ぎていたとは言え、あのカミソリお龍を倒したのである。
カミソリお龍は失意のうちに引退してしまった。

まゆ子も姫野に続いてデビューした。
姫野と戦うために、姫野とは別のジムに入会した。
まゆ子も持ち味のパンチ力で勝ち進んだ!
しかも殆どKO勝ちだった。
それでクラシャーデビルと恐れられた。
いつしかリングネームもクラッシャーデビルに
変わっていた。
遂にクラッシャーデビルと姫野ココロが戦う時が来た。
それはまゆ子がボクシング界に入った時からの夢だった。
クラッシャーデビルと姫野ココロ
女子ボクシング界で確固たる地位を築き上げて行った姫野。
それを追いかけるように連戦連勝!
しかもKO勝ちのまゆ子。
遂にふたりが激突する日がやって来た。
まゆ子は姫野を目標に追い付き追い越せと辛い練習にも励んで来た。
姫野のボクシングは可憐で美しい!
沢山のファンを魅了している。
まゆ子のボクシングはどちらかと言うとヒール役だ。
いくらKO勝ちしても会場はブーイングの嵐だ。
一体何が違うんだ!
私と姫野の違いは?

運命の対決の日はやって来た。
会場は姫野のファンでいっぱいだ。
まゆ子が紹介されると早くもブーイングの嵐だ!
頭に来るったらありゃしない!
「まゆ子、遂にこの日が来たわね。遠慮しないわよ!」
姫野がまゆ子に話しかけた。
「フン!今にこの会場の声を悲鳴に変えて見せるわ。」
まゆ子が紹姫野に言った。
姫野はまゆ子を見てフフフと笑った。
カーン!
ゴングは鳴った。
まゆ子が姫野に襲い掛かる。
ブンッブンッ!
姫野が軽くステップで交わす。
しかしまゆ子は身体ごとプレッシャーをかけコーナーに姫野を追い詰める!
まゆ子の得意の戦法だ!
コーナーに詰まりながらも、姫野はパンチを繰り出す。
良いパンチがまゆ子にヒットする!
しかしまゆ子は怯まず重たいパンチを姫野に打ち込む!
堪らず姫野は身体を入れ換える。
「フーッ相変わらず強引な攻めね。」
姫野は距離を取り、まゆ子にジャブを浴びせる!
まゆ子は両腕でガードしながら突っ込んで来る。
姫野は闘牛士のようにそれを交わし、パンチを浴びせる!
1ラウンドから壮絶な展開だ!

姫野は打っては離れ打っては離れ、可憐なボクシング!
まゆ子は構わず大きなパンチを振り回す!
そう言う展開でラウンドは進んだ!

ラウンドが進んでもまゆ子のパンチは生きている!
破壊力抜群だ!
あんなパンチをもらったら一溜りも無い!
お互い体力は消耗して来た。
まゆ子は姫野をコーナーに詰める!
まゆ子が繰り出したパンチ!
遂によけ切れずに姫野にヒットした!
パンチは効いた!
姫野は足がガクッとなった。
「チイッ!まずいパンチをもらってしまったわ。」
姫野に焦りが…。
何とかしてこのラウンドを堪え切れなければ!
しつこく攻めて来るまゆ子!
クラッシャーデビル!ピッタリの名前だわ。
姫野はジャブを出しながら必死でまゆ子のパンチを交わす!
まゆ子の体力も消耗し切っていた。
最初からパンチを振り回しているのだ!
おまけに姫野のパンチを受け続けている。
遂に最終ラウンド!
ふたりは互いの力を出し尽くした。
最後クラッシャーデビルことまゆ子が攻める!攻める!
しかしここでゴングが鳴った!
勝負は判定に持ち込まれた!
判定は序盤から確実にパンチを当てていた姫野に上がった。
会場からは惜しみない拍手が起こった。
まゆ子は勝てなかったがあと一歩まで追い込んだ。
清々しさが残った。

その後も姫野は勝ち進み、遂に日本チャンピオンの座に着いた。
まゆ子も勝ち進んだが、対戦相手が2人続けて再起不能になり
対戦してくれる相手がいなくなった。
タイトルを防衛する姫野!
対戦相手がいないまゆ子!

そんな時に対戦を受けてくれたのがアリスだったのである。
相手はデビュー戦らしいが、この試合に勝って、姫野のベルトに挑戦するわ!
姫野もこの試合を観に来てくれていた。
「フフフ…。この試合勝ってあなたのベルトに挑戦しに行くから待ってな。」
まゆ子は姫野に言った。
「この試合、舐めてかからない方が良いみたいよ。」
姫野はセコンドのRコーチを見て言った。
「彼女が育てた選手はいづれも強敵だったわ。
最初はじっくり見て行った方が良さそうよ。」
姫野はまゆ子にアドバイスした。

ゴングは鳴った!
まゆ子は姫野のアドバイス通り、最初はじっくり見て行くことにした。
相手は軽くジャブは出すみたいだがあまり強さは感じられない。
まゆ子はパンチを出し、何時ものペースで戦うことにした。
まゆ子は強烈なパンチを繰り出す!
2ラウンドが始まり
アリスはジャブを繰り出すが構わずコーナーに追い詰めた!
ガードを固めるアリス!
まゆ子は構わずブロックの上からパンチを放ちガードをこじ開ける。
目一杯のパンチを放った時、ある衝撃が!
その後記憶が無かった。
気が付くと控え室で寝かされていた。
一体どうなったの?
そこにトレーナーと共に姫野ココロがいた。
「あなたは強烈なカウンターを喰らってここに運ばれて来たの。
飛んでも無い選手が現れたもんだわ。」
「そう、私は負けてしまったの…。あなたの言う通りだったわ。」
まゆ子は寂しげに言った。
姫野は新たな強敵出現に身が引き締まる思いだった。
関連記事

ボクシングを始めた少女 その2

みなさん、ご訪問ありがとうございます〜♪
いつも読んでくれてありがとうございます。


ワタやんは浩一を鍛え始めた。
まずは地獄の縄跳び!
スタミナも何も無い浩一。
ただただ言われた通り飛んでいた。
スタミナの無い浩一に取っては正に地獄の苦しみだったに違いない。
それでも浩一は言われた通り飛び続けた。
きっと浩一なりにイジメから脱出したいと言う思いがあったのかも知れない。
ワタやんは思った。
「ふふふ…これは意外に強くなるかも知れんな…。」
ワタやんの口がニヤリと笑った。
まずワタやんは浩一のスタミナ作りに専念した。
兎に角、走れ走れ走るのだ!
「ヒェ〜もうダメだよ〜ヒェ〜ヒェ〜ヒェ〜!」
浩一は泣きながら走った。
来る日も来る日も…。
浩一は段々泣き言を言わなくなった。
ただただ走った!
ワタやんは
「むう〜。そろそろかな?」
ワタやんは浩一にジャブを教えた。
「良いか!これからお前に特別に必殺技のパンチを授けよう!
左足を少し前に出し左拳を顎の直ぐ下に付け
そのまま真っ直ぐ出して、素早く引く!
これを永遠と繰り返すのだ!
これはお前だけに授ける必殺パンチだ!
今日から永遠と打ち続けるのだ!」
誰が聞いても嘘だと気が付くのだが、浩一は信じた。
「はい!分かりました。」
浩一はワタやんの教えを忠実に守りジャブを打ち続けた。
ワタやんは、自分の言う事を全く聞かない井口にイライラしていた。
つい、何でも言う事を聞く浩一を面白がってからかった。
浩一はランニングとジャブを永遠と続けた。
その後、ワタやんは井口のデビュー戦などで忙しくなって、
浩一の事をすっかり忘れてしまっていた。
井口のデビュー戦も見事KO勝利で飾った!
井口はジムを上げての選手だった。
会長は多額の大金を投じて高校8冠の井口を獲得したのだった。

1ヶ月ほどして、まだ浩一がジムに来ているのに気が付いた。
「何だ?あいつまだ来ていたのか?」
見ると身体が絞れている。
ワタやんは、浩一が真面目に練習していたのが直ぐに分かった!
浩一にも変化が起こっていた。
ある日、学校の不良たちから絡まれた。
何時もの事だったが、その日は不良達にも嫌な事があったらしく
必要に絡まれた。
後ろから蹴られ!殴られ!
何人もの不良達からど突かれた!
これはリンチと言って良い程だった。
浩一は殴られ、意識が遠のく…。
浩一は無意識の内にワタやんから教わったジャブを打ち放っていた。
きゃーッと言う女性徒の声で我に返った浩一。
周りには血だらけの不良達が倒れていた。
「誰がこんな事をしたんだ…。」
自分の拳で倒したなんて信じられなかった。
「これがワタやんが言っていた。必殺パンチだったのか…。」
ワタやんは浩一の目に自信が溢れているのに気付いた。
そして浩一が放つジャブを見て驚愕した!
「何と言う事だ!これはジャブと言うよりストレートに近い!
しかも1流選手が放つストレートにだ!」
それからワタやんはワンツーを教えた。
ジャブジャブ!ストレート!
このコンビネーションだ!
浩一は水を得た魚のように生き生きとして来た。
アリスは浩一を見ていた。
そして清としてワタやんと過酷な練習をしていた頃を思い出していた。

王拳ジムはアリスの入門により女子部門を設立!
アリスとミキとそして高校総体で優勝したイチゴが入門して来た。
女子部門のコーチとしてRコーチが就任して来た。
女子ボクシングの先駆者。
そうあの鬼のRコーチだ!
冷酷無比のRコーチにアリス達は耐え切れるのか?


Rコーチは吠えた!
「何をやってんのよー!
あなた達やる気あるの!
こんなんじゃ世界チャンピオンになれないわよ!」
厳しいとは聞いていたがこんなに厳しいとは…。
Rコーチは自分が叶えられなかった夢をこの3人に託していた。
私の夢を打ち砕いた姫野ココロに復讐を果たすのよ!
姫野ココロは全日本チャンピオンの座に着いている。
世界王座挑戦目前のRコーチを新人の姫野ココロが破り
Rコーチの世界挑戦は消えた。
Rコーチは失意の中で引退!
姫野ココロは勝ち続け全日本チャンピオンの座を守り続けている。
「今度は私が育てた選手で姫野ココロを倒すのよ!」
しかし今まで育てた選手はことごとく姫野ココロにやられていた。
今度こそ!
そう誓ってこの王拳ジムにやって来たのであった。
恐いRコーチのシゴキに耐えられるのか?

Rコーチの練習は厳しかった。
しかし指導は的確だった。
全ての指導が理に叶っていた。

まずRコーチが目に付けたのはアリスだった。
あの動きはかなり鍛えられている。
身体つきは、まだまだなのに、動きはそれとは裏腹に
とても良い動きをしていた。
特に相手の癖を見抜くのが早い。
他のふたりはすっかり癖を見抜かれて、もはや
アリスの練習相手にはならなかった。
3人はプロテストに合格していて、ライセンスは所得している。
「そろそろデビュー戦を組まないといけないわね。」
Rコーチはワタやんと話し合った。
「丁度ローズジムから対戦相手の打診があったところや。
確か選手の名前は…。」
アリスのデビュー戦は決まった。
それは飛んでも無い相手だった。

クラッシャーデビル。
彼女はその名の通り対戦相手を潰して行く!
それ程強いパンチの持ち主だった。
あまりの壮絶さに皆はクラッシャーデビルと呼んだ!
そしてそれがリンクネームとなったのだった。
そのクラッシャーデビルがアリスのデビュー戦の相手だ。

ドスンッ!ドスンッ!
サウンドバックを叩く音が響く!
「え?次の対戦相手が決まったのかい?」デビルが言った。
彼女はあまりの強打に恐れられて対戦相手が見つからなかったのだ。
「ふふふ…。どこの誰だか知らないけど、対戦を受けてくれてありがたいわ。
試合が出来なくてうずうずしてたのよ!」
デビルは不気味に笑った。

「えー!クラッシャーデビルってそんなに強い相手なの?
そんなの聞いて無いわ!
私は嫌よ!絶対そんな強い相手とは戦いませんからね!」
アリスは大きな声で言った。
しかし実際に出てきた声は
「分かりました。相手が誰でも頑張ります。」
もちろん、清が代わりにアリサヤの身体を通じて答えたのだった。
「そう、頼もしい答えだわ。」
Rコーチは満足気だった。
〜えーん!そんな…。私は嫌よ!〜
アリスの心の声は声として出て来なかった。

その頃浩一はメキメキ才能を開花させていた。
ワンツーワンツー!ストレート!
フック!アッパー!
浩一は多彩なパンチを物にしていた。

「へッ!ワタやん、そんな奴鍛えても仕方ないぜ!」
井口が珍しくワタやんに絡んで来た。
ワタやんが浩一を可愛いがるので、ヤキモチを妬いているのかも知れない。
「へへ!良かったら俺がスパークリングやてやろうか?」
執拗に絡んで来る井口。
ワタやんは考えた。
もちろんまだまだ井口には敵わない。
しかしワタやんには秘策があった。
「そうか?良かろう!
じゃ井口の胸を借りようかな?お手柔らかに頼むぜ!」
ワタやんは井口に言った。
ワタやんは井口の気になる欠点に気付いていた。
そこを浩一に突かせて見たかった。
「ワタやんさん…。そんな井口さんとスパーリングなんて無理ですよ〜。」
浩一は震えていた。
「大丈夫だ!自分を信じろ!
もしやばくなったら直ぐ俺が止めてやる。
お前が死んだら俺が骨を拾ってやる!」
あまり励ましの言葉になっていない。

井口は苛立っていた。
いつも目にかけてくれていたワタやんが最近はあまり小言を言わなくなった。
それも初心者を熱心に指導している。
この俺への練習を差し置いて、初心者の指導をしているのだ。
プライドの高い井口には許せなかった。

ワタやんは思った。
井口に浩一をぶつけるのは、まだ早いかも知れないが
まあ良いだろう。
井口の目を覚まさせるくらいは出来るかも知れない。
ワタやんはここのところ浩一に付ききりだった。
正直ワタやんは驚いていた。
このひ弱な情けなさそうな男が意外と吸収が早い!
真綿に水が吸い込まれて行くように、ワタやんが教えたことを吸収して行く。
浩一の才能を感じていた。
こいつの才能を開花させるのも俺の仕事だな。
こいつは意外と拾い物かも知れないぞ。
段々ワタやんは浩一を指導する事が楽しくなって来ていたのである。
それでついつい浩一に付きっきりになってしまっている。
「良いか!浩一!今までして来た事を思い出せ。
まず、相手を良く見てジャブを繰り出すんだ。
そして相手の目を見ろ!何処にパンチを打って来るか感じるんだ!」

「へッ!用意は良いぜ!早くゴングを鳴らせろよ!」
井口はリングのコーナーで両肘をロープにもたれ掛かり言った。
「良し、始めるぞ!」
リングのそばでは井口をライバル視している高校五冠の松田もスパーリングを見ていた。
カーン!
ゴングは鳴った。
「思い出せ!思い出すんだ!あの不良達を倒した時の感覚を!」
浩一は心の中で自分に言い聞かせていた。
そう、浩一は不良達からリンチを受けていた時、ワタやんから教わったジャブで
不良達8人を倒していたのだった。

井口は浩一を舐めてかかっていた。
「へッ!なんで俺はこんなチンケな奴の相手をしているんだ?
こんな奴、思いっ切りぶん殴って倒してやるぜ!」

「良いか、井口は大きなパンチを打つ前に反対側の肩が少し下がる癖がある!
その時、顎にジャブを合わせるんだ!
それがカウンターとなって、パンチ力は倍増する!」
浩一はワタやんの言葉を思い出していた。

井口はいきなり大きなパンチを繰り出して来た!
浩一はそれに合わせジャブを井口の顎に打ち込んだ!
それはジャブと言うよりストレートと言った鋭いパンチだった!
見事に井口の顎にヒットした。
バキッ!
井口は倒れた!
それは一瞬だった!
周りは我が目を疑った!
ワタやんでさえ、驚きの表情をしている。
「く、クソ…。」
井口は立ち上がった。
「クソ…。こんな奴に負ける訳にはいかない…。」
井口は効いていた、足が震えている。浩一のパンチは足に来ていた。
浩一は襲いかかって来る!
不用意にパンチをもらってしまった。
こんな素人のパンチを…。
井口は浩一のパンチをよけ、パンチを繰り出す。
浩一の鋭いパンチが井口に繰り出されていた。
なんてジャブだ!
ダメージがある井口だが何とかジャブをかわしパンチを繰り出す!
井口は必死だった!
カーン!
なんとか1ラウンドを持ち堪えた井口。
「クソー!何をやってるんだ!俺は!
こんな初心者のパンチをまともに喰らってしまって…。」
井口は本気モードになった!
正に目が覚めたと言う感じだ!

「良いぞ!浩一!良いか大振りはするな!徹底的にジャブを打続けろ!」
ワタやんは浩一に言った。
まさか井口からダウンを奪うとは、驚きだ!
これで奴も目が覚めただろう!
井口がこのジムに来てダウンをしたのは初めてだった。
いや、スパークリングの相手を圧倒して倒していた井口がダウンするなんて
みんな驚いている。
カーン!
注目の2ラウンドが始まった。
井口のダメージはまだ残っていたが、それでも何とか足は動く!
浩一はジャブを放つ!
井口が対戦したどの選手より鋭いジャブだった。
ガードする腕が痺れる程だった。
井口は必死だった!
このひ弱な初心者を相手にである。
井口がパンチを繰り出す、それに合わせて必ずパンチが飛び込んで来る!
俺のパンチが読まれている?
こんな初心者にそんな芸当が出来るのか?
あ!ワタやんの指示だ!
あのワタやんにそんなトレーナーの素質があったとは…。
ワタやんの支持を全く無視して来た事を悔やんだ。
浩一のジャブが井口を追い詰める。
井口は苦し紛れにボディーブローを打ち込んだ!
最後の力だった!
浩一の動きが止まった。
そのまま膝を着いて倒れた。
凄まじいボディーブローだった。
辛うじて浩一を倒した井口。
みな浩一の元へ。
井口は静かにリングを降りた。
このスパーリングを静かに見つめるアリスがいた。

浩一は立ち上がった。
そしてみんな浩一の健闘を讃えた。
「お前凄いよ!」
なんとか倒したが井口は敗者の気分だった。
全く鼻っ柱を折られた感じだ。
この日から井口は変わった。
練習にも力が入り、ワタやんの指導に耳を傾け素直に従った。
そして浩一もこのスパーリングで自信を付けていた。
浩一の成長振りは凄まじかった。
どんどん吸収して行く。
その後も何度も井口とスパーリングを重ねた。
井口とまともにスパークリングの相手を出来るのは浩一だけだった。
時には井口を圧倒する場面も何度もあった。
何時しか井口と浩一は熱い友情が芽生えていた。
それは井口にとっても浩一にとっても初めての事だった。
アリスはそんな2人を羨ましく見つめていた。

そんな中、アリのデビュー戦の日が来た!
強打のクラッシャーデビルにアリサヤは勝てるのか?
Rコーチは言った。
「ちょっと!私の出番が少ないんじゃないの?」

つづく
関連記事
プロフィール

kantakun007

Author:kantakun007
初めまして
勘太と言います。
よろしくお願いします。
下手ですがイラストを描くのが好きです。
暖かい絵を描きたいなぁ。

最新コメント
カウンター
ブログ村
にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ
にほんブログ村
最新記事
楽しい物語
ちょっと不思議な楽しい物語がいっぱいです。是非読んでみてね。
リンク
くろックCute DC01
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ
カレンダー
04 | 2014/05 | 06
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
{\rtf1\ansi\ansicpg1252 {\fonttbl\f0\fnil\fcharset0 ArialMT;} {\colortbl;\red255\green255\blue255;\red0\green0\blue0;\red255\green255\blue255;} \deftab720 \pard\pardeftab720\sl320\partightenfactor0 \f0\fs26 \cf2 \cb3 \expnd0\expndtw0\kerning0 \outl0\strokewidth0 \strokec2 \ \ \ }