トライアウト

彼はマウンドに立っていた。
トライアウト。
クビになった野球選手達が拾ってもらえる球団を求めて
テストを受ける場所だ。

彼は甲子園の優勝投手だった。
スマイル王子として人気も出た。
決勝戦では怪物と称される北海道、北の国高校の山田正志に投げ勝った。
伊藤祐司。
プロ入りした山田を尻目に大学進学。
大学日本一の栄冠をぶら下げ、ドラフト1位でプロ入り。
先にプロ入りした山田は、高卒1年目から活躍し、伊藤が入団した時は
エースの座を掴んでいた。

ついに祐ちゃんプロ入り。
マーくん祐ちゃんの対決再び!
マスコミは盛り上がった。

山田は、伊藤の入団に刺激されたのか、グングン飛ばした。
伊藤もまだまだプロの身体にはなっていなかったが
そこそこの勝ち星を上げた。
2年目には祐ちゃん人気も手伝って開幕投手に抜擢され
見事勝ち星を上げた。

ここまでは順調だった。
オールスターにも選ばれ、意気揚々だった。
しかしその時だった。
肩に激痛が…。
オールスターも辞退、リハビリに努めた。
元々負担の少ない綺麗なフォームの伊藤。
しかし肩をかばえば肘を痛め、なかなか回復しない。
長期離脱を余儀無くされる。
勝ち星を重ねる山田。
肩の故障で戦線離脱の伊藤。
マスコミも初めは、山田と伊藤を比較していたが
最近は伊藤の名前を取り上げるマスコミもいなくなった。
ゴールデンルーキーは毎年毎年入ってくる。
今年は二刀流の新人選手の話題、そのライバルの甲子園の星の投手の
話題で持ち上がった。

またそのゴールデンルーキー達の活躍でさえ、霞む山田の活躍。
なんと開幕24連勝!
日本シリーズをも制し、来季はメジャーに挑戦か!
と噂されていた。

念入りなリハビリにより、ようやく痛みが取れた伊藤。
これからはより肩に負担の少ないフォームに修正。
2軍で調整する伊藤。
しかし2軍戦での登板でさえ、結果を残せない。
投げても投げても滅多打ち。
人気者の伊藤、球団としても彼を使いたいが打ち込まれる。
球団も前年度リーグ優勝を果たしているのに最下位に沈んだ。

山田はポスティングシステムと言うシステムを使って
メジャーに進んだ。
高額の契約金。
山田は意気揚々と海を渡って行った。

伊藤は依然として調子が上がらない。
次の年も殆ど1軍に上がれないまま
ついに戦力外通告を受けた。

伊藤は引退を考えたが、やっと肩の痛みも完全に癒えた。
さあ、これからだと言う時に戦力外通告。
このままでは終わられなかった。
肩の調子も今までになく調子が良い。
伊藤はトライアウトに賭けた。
もちろん自信がある。
肩さえ治れば、絶対に大丈夫だと。

いよいよトライアウト当日を迎えた。

トライアウト当日。
伊藤は周りを見渡した。
つい最近まで活躍していた選手もいる。
「日山、なんであの人がいるんだ? 」
某球団で4番を打っていて、天才と言われていた男だ。
伊藤はこの世界の厳しさを改めて知った。

ついに伊藤の登板。
ズッバーン!ズッバーン!
「よし、球は走っている。 行けるぞ! 」
打者6人に対戦。
1イニング目、三者三振!
見事なスタートだ。
各スカウト陣も唸った。
2イニング目。
三振!次の打者も三振!
伊藤は復活を確信した。
次の打者はあの日山だった。
ツーストライクと追い込み、最後の決め球。
1番自信のあるシンカーを投げ込んだ!
「よし決まりだ! 」
カキーン!
打球は外野フェンスを超えた。

伊藤は球団からの連絡を待った。
きっと来るはずだ。
伊藤は待った。
電話のそばから離れず、何日も待った。
しかし連絡が来ることはなかった。

山田はメジャーのマウンドに上がっていた。
期待されて、高額の契約金と連勝記録携えて、メジャーに乗り込んだ。
力で抑え込む山田のピッチング。
特にピンチになってからの山田のピッチングは凄かった。
しかしランナーを溜めてから、いとも簡単に打たれた。
1年目は4勝止まり、負けの数は勝ち星の倍以上だった。
2年目も山田は苦戦していた。
打ち込まれる日が続いた。

トライアウトでさえも、拾ってもらえなかった伊藤は
もはや生きる望みを失っていた。
就職する訳でも無く、ただボンヤリする日々が続いていた。
そしてついに覚悟を決めていた。

山田の苦戦は伊藤の耳にも届いていた。
「バカな奴だなぁ。
あれだけの球を持っているんだから、もっとアタマを使って
投げれば良いんだよ。
ただただ速い球だけを投げていたら、そりゃ打たれるよなぁ。。。
なんたって、あっちはこっちと違ってパワーヒッターばっかりなんだから
俺だったらなぁ。。。
まあ、俺には関係ないことだけど。。 」
伊藤はありったけの睡眠薬を呑み込んだ。

山田は今日も打ち込まれていた。
山田はすっかり自信を失っていた。
眠れない夜が続いていた。
この日は何時もの倍以上の睡眠薬を口にした。
「日本に帰りたい。」
彼の頬を涙が流れた。


伊藤は長い長い眠りから目が覚めた。
「ここは、何処だ…? 」

そうか、俺は大量の睡眠薬を飲んだんだった。
死に切れなかったのか?
それとも天国なのか?

その時、ノックの音がして、ドアが開いた。
見知らぬ男が何か言っている。
「山田、大丈夫か?
随分うなされていたようだけど。 」
なに?山田?
俺は伊藤だぞ!
男はまだ何か言っているが、頭がボーッとして、よく聞こえない。
伊藤は顔を洗うため洗面所へ。
しかし洗面所の場所が分からない。
「あれ? 」
なんとか洗面所にたどり着くと、伊藤は人生で1番の驚きを体験した。

「あれ?山田、何してんだ?
なんで山田がここにいるんだ? 」

その山田が自分だと気付くまで、どれだけの時間がかかっただろう。
伊藤は声を失った。
男が寄って来た。
全く知らない男だった。
男も異変に気付いたようで、「山田…大丈夫か? 」

男は山田のマネージャー山内だった。
伊藤はまだパニックになっていた。
「山田、落ち着け!
良いか?俺が誰だか分かるか? 」
首を振る伊藤。
「ハァ…。」山内は、溜息を突いた。
最近、負けが混んでいてかなり参ってはいたが。。。
そして山内は睡眠薬の瓶を見つけた。
お前、睡眠薬を飲んだのか?
うなずく伊藤。

少しずつ事態を把握して来た。
伊藤はすがる思いで、山内に事態を話した。
山内は信じられなかった。
「またまた〜俺をからかってどうするんだよ。 」
山内は鼻で笑った。

「と言うと、お前はあの伊藤だと言うのか?
じゃ、山田はどうした? 」
「俺にも解らない。
今起きたら、山田になっていたんだ。 」
「そうかそうか、解った。 俺に任せておけ。
俺はお前のマネージャーの山内だ。 」

山内はまだ信じていなかった。
山田がノイローゼで少し頭が可笑しくなったんだと思っていた。
ここは逆らわず、話を合わせておこう。

しかし困った事になった。
こっちの世界では契約が全てだった。
ここでチームを
離れることになったら、莫大な違約金を取られてしまう。
ここは話を合わせて、何とか山田に頑張ってもらわないといけない。

伊藤は山内の巧みな誘導により、山田として試合に出ることになった。


さてさて、この後の展開はどうなって行くのでしょう?


トライアウト その2

祐司は胸が踊った。
山田としてではあるが、憧れのメジャーで投げられるのだ。
まだ、この不可思議な状態には慣れていないが、おそらく
夢の中みたいなものだろう。
そうとでも考えないと説明が付かない。
明日になれば、自分のベットで目が覚めるのかも知れない。
いや、死ぬつもりで睡眠薬を多量に飲んだから、天国に行く前に
神様がご褒美をくれているのかも知れない。
兎に角、この夢のようなチャンスを楽しもう。

祐司はブルペンで投げて見た。
ズッバーン!!
軽く投げているのにこの威力!
凄い球威だ。
祐司は、今までこんな凄い球を投げたことが無かった。
山田、お前は本当に恵まれていたんだな。
これならどんな打者だって打ち取れる。

さあ、試合開始だ。
相手はニューヨークヤンキース。
相手にとって不足はない。
球場の陰では山内が祈るようにこっちを見ていた。
1番イタロー。
言わずと知れたイタローだ。

ブーブーブー

キョウノセンパツハ、サイキンウチコマレテイル ヤマダ
カイジョウハブーイングガオコッテイマス

祐司は投げた。
自分の頭脳的ピッチングに山田の球威があれば
絶対に打たれない!
速い球で内角を突き、次に外角低め
そして最後はスローカーブ。
イタローは全くタイミングが合わず三振。

球場にどよめきが起きる。
今までと違った山田の配球。
なんと7回までパーフェクトピッチング。
これが今まで、出ては打たれ、出ては打たれていたピッチャーだろうか?
結局8回に1本ヒットを打たれたものの1安打完封。
球場は沸き返った。
試合が終わると山内が抱きついて来た。

メディアは山田を取り上げた。
昨シーズンは鳴り物入りで乗り込んだ割には、4勝9敗。
ファンは失望した
おまけに今シーズンは勝ち星無しの4連敗。
相手打者に完璧に配球を読まれていた。
ところが今日は名門ヤンキーズ相手に1安打完封。
その1安打も、ボテボテの当り損ないの内安打。
あわやパーフェクトのピッチング!

山内は泣きながら叫んだ!
ブラボー!ブラボー!

祐司は人生で最高の思いだった。
祐司はついにちょっと前に人生を悲観して、睡眠薬自殺を試みたのであった。
人生は、まだまだ色んな可能性があるんだ。
俺はなんてバカなことをしたんだ。
きっとこの山田も悩み抜いていたんだんだろう。
山田のベット脇にあった睡眠薬を思い出していた。

その時、あどけなく可愛い少女が寄り添って来た。
山田の新婚の奥さん、イチゴである。
イチゴは売れないアイドルを経て、おバカタレントとして
ブレークした。
しかし実はしっかりした献身的な少女であった。
山田はその純粋なイチゴの心に惹かれた。
そんなイチゴが寄り添い、祐司は頬を紅く染めた。


山田は目が覚めた。
ううう…。
ここは何処だ?
全く見知らぬ部屋だった。
山田は霞んだ記憶を探り必死に記憶を辿っていた。
そうだ、俺は試合で負けが続き、眠れない夜が続いて
やけになって睡眠薬をがぶ飲みしたのであった。
俺は死んだのか?
いや、間違いなく生きている。
しかしなんだか変である。
身体が妙に軽い。
山田は鏡を見て、驚愕した。
そこには見慣れた顔があった。
しかしそれは山田ではない。
お、お前は伊藤?
え?いや俺が伊藤??
いったいどうなっているんだ?

山田は伊藤が戦力外になり、トライアウトを受けたが駄目だったと
風の頼りで聞いていた。
そうか、あいつも悩んでいたんだな。
しかし何故俺が伊藤になっているんだ。
そこには伊藤の遺書があった。

遺書
私は高校大学と恵まれた野球人生を送って来ました。
プロ野球に入ってもそれは続くと思っていました。
それは突然やって来ました。
肩の激痛。
私はリハビリに努めました。
しかしリハビリは思うように行かず
また長期離脱で焦り、完治してなくても状態が改善すれば
復帰し、また痛めると言う状態でした。
やっと完治し、これからだと言う時に解雇されてしまいました。
望みのトライアウトも自分には手応えがありましたが
採用にはなりませんでした。
もう生きる希望がありません。
先立つ不孝をお許し下さい。

伊藤祐司

なんてバカな奴なんだ!
山田は憤慨した。
これくらいの挫折で自殺なんかしやがって!
しかし何故俺が伊藤の身体になってしまったんだ?
山田はマネージャーの山内に電話した。


山内は感激していた。
あれだけ打ち込まれていた山田が、生まれ変わったようなピッチング!
あわやパーフェクトと言う出来だった。
山内は山田の復活に酔いしれていた。
その時、山内の携帯が鳴った。

もしもし俺だ、山田だ!
え?
山田はあそこにいるぞ。
そいつは俺じゃない。いや、本物の山田じゃない。
おそらく、そいつの中身は伊藤だ。
え?じゃあの話は本当だったのか?
山内は蒼ざめた。

テレビをつけると山田の活躍が報じられていた。
クソッあいつやってくれたな。
ふふふ…。
伊藤にしてやられたと、思わず笑みがこぼれた。

その時、伊藤の携帯が鳴った。
はい、山田、いや伊藤です。
え?ソフトバンクさんが…?
ええ、トライアウトでは良いところもあったので
もう一度テストしてみたい。
一度福岡に来て頂けませんか?
ソフトバンクとしては、人気者の伊藤が入れば、興行的にも
話題になる。
上手く行けば儲けもんと言うくらいのところだった。

あいつがやってくれたんだ。
今度は俺の番だぜ!
あいつは考え過ぎなんだ!
もっと思い切りに行かなきゃ、通用しないぜ!
正志は福岡に乗り込んだ。

福岡に乗り込む正志。
果たして、伊藤の身体で通用するのか?

次回につづく

トライアウト その3

みなさん、ご訪問ありがとうございます。
好評のトライアウト
なんとあの祐ちゃんとマーくんが入れ替わってしまうと言う
とんでもないお話です。

入れ替わった伊藤の身体でどう言う展開になって行くのでしょうね。

ヤフオクドーム、しかし2軍は西戸崎のグランドで練習だった。
正志は、そこでテストされることになった。

よう祐ちゃん、来てくれたな。
はい、よろしくお願いします。
よし早速着替えてもらおうか?
分かりました。
いきなりテストか…。
まだこいつの身体に慣れとらんのになあ…。
まぁ、そんな泣き言言っとられんな。
あいつはメジャーで活躍したんやさかい、俺も負けとられんな。

よし、充分身体を解してくれよ。
正志は小一時間身体を動かして、軽くウォーミングアップをした。
どれ、どれ位の球がほうれるんかな?
正志は軽く投げ始めた。
バシッ!バシッ!
結構シャープな球が行くな。

ほい、いつでも良いですよ。
そうか?
じや松外、お前行け。
イキナリ元主砲の松外である。
松外が三冠王を取ったのは、正志も記憶に残っている。
いきなりごっつい相手やな…。
ほな!行くで!
ズバーンッ!
初球、ど真ん中に速球!
おおっ、大胆な攻めやな。
祐ちゃんは、技巧派と思っとたけど、なんか吹っ切れたかんじやな。
次は内角にストレート!
最後は外角低めに速い球。
全てストレートだった。
なんだか生き生きしていますね。
広報の田坂が言った。
んー、まだまだや!
次、中森!
ホークスの若手のポープ中森の登場だ。
今シーズン活躍して、1番のポジションを
奪い取った、絶好調の中森だ。
中森に対しても、初球ど真ん中のストレート!
気迫がこもる投球だった。
中森は正志の気迫に押される形で内野ゴロに倒れた。
やるな!
次は4番候補の松駄だ。
これまた初球、ど真ん中のストレート!
打てるもんなら打ってみろ!
と言う気迫が伝わって来る。

良し、もう良い!
監督の春山が言った。
伊藤くん、合格だ。
ようこそ、ホークスへ。
え?ホンマでっか?


なにより伊藤の気迫を春山は買った。
監督、いきなり決めて大丈夫ですか?
もっとテストしたほうが…。
ピッチャーに取って、一番大事なものは、
速い球や技術じゃない!
打者に向かう気迫だ!
俺はあいつの気迫に賭けてみるよ。
こうして伊藤のホークス入りが決まった。



祐司は興奮さめぬまま家に帰った。
山田の新居にである。
当然、イチゴと2人きり…。
この場合、どうすれば良いのだろう?
貴方、今日はナイスピッチング!
野球選手は1年の半分はロードに出て、家を留守にする。
奥さんにとっては、一緒にいるのは貴重な時間なのだ。
イチゴは甘えて来た。
ねぇ〜
顔が赤くなる祐司…。
そこへ山内がやって来て、祐司を連れ去って行った。
奥さん、すみません。
大事なミーティングがありますので…。
山内は山田からくれぐれも伊藤とイチゴを一緒にさせるなと言われていた。
当然と言えば当然だある。
可哀想なイチゴであった。


早速記者会見が行われた。
伊藤祐司 ホークス入り!
このニュースはあっと言う間に日本全国、いやアメリカの祐司の耳にも入った。
祐司は、山田が祐司の身体に入っていることを聞かされていた。
そうか…。
さすが山田だな、俺がどんなに頑張ってもトライアウトでさえ
上手く行かなかった物をあっさりホークス入りを決めやがって…。
何を言ってるんだ。
その山田でさえ、なかなか通用しなかったメジャーであんなピッチングを
披露したのに、お前ももっと自信を持てよ!
山内が上機嫌で話した。
裕司も少しずつ、今の環境に慣れ始めていた。
自分の身体に山田が入っている。
全く不思議だった
そんなドラマを見たことはあるが、まさか自分の身に起こるとは夢にも思っていなかった。

正志は2軍戦に登板した。
監督の春山も観戦に来ていた。
相手は古巣のファイターズ。
因縁の対決だが、正志には関係なかった。
正志は構わずストレートを
投げ込んだ!
ズッバーン!
ズッバーン!
戸惑ったのは、ファイターズの選手達である。
つい最近まで、2軍で一緒にやって来ていたのである。
伊藤は故障して、肩をかばうフォームに修正していた。
しかしそれが伊藤の良さを殺していた。
しかし今日は肩をかばうどころか、お構いなしに全力で気迫のこもった球を投げて来る。
ランナーを出してからは特に凄かった。
7回を投げて無得点に抑えていた。
ランナーを出しても得点を与えない、まるで山田みたいだな。
監督の春山は唸った。
よし、早速一軍に上げよう!
こうして伊藤は1軍のマウンドに戻って来た。


海の向こうでは祐司が2勝目を挙げていた。
メディアは山田の頭脳的なピッチングを賞賛していた。
ただイチゴは不満だった。
ホームにいるのに全然一緒にいられない。
旦那が勝ち星を挙げるのは嬉しい。
でも。。。

試合が終わりロッカーから戻ってくる祐司。
イチゴは泣きながら山田に抱きついた。
ねえ、私の事が嫌いになったの?
ねえ…。
お願い…。答えて…。
裕司は戸惑った。
頼みの山内はいない。
祐司はイチゴを抱きしめた。
イチゴは涙が止まらなかった。

果たしてふたりはどうなるのか?

次回につづく

トライアウト その4

みなさん、ご愛読ありがとうございます。
イチゴを抱きしめてしまった祐司!
ふたりはどうなるのでしょう?

祐司はイチゴを抱きしめた。
初めてイチゴを見た時から、祐司は胸がときめいていた。
祐司はこのままイチゴを…。
祐司の心は格闘した。
しかし自分の身体にはあいつが…山田が宿っているんだ。
祐司はやっとの思いで、イチゴから離れた。
そして、イチゴに打ち明ける決心をした。

良いかいイチゴさん、驚かずに聞いて欲しい。
え?何…?
やっぱり嫌いになっちゃったの?
他に好きな人が出来たの?
いや、違うんだ!
実は俺は山田じゃ無いんだ。
おれは伊藤祐司だ。
え?伊藤って、あの伊藤祐司??
バカなこと言わないで!
どこが伊藤祐司なのよ!
どこをどう見たって、山田正志じゃない!
祐司は取り乱すイチゴをじっと見つめていた。
そしてイチゴが少し落ち着きを取り戻して来た時に話し始めた。

実は俺は、伊藤祐司で、球団から戦力外通告を受けて、トライアウトにも
失敗し、睡眠薬を多量に飲んで自殺を図ったんだ。
そして長い眠りから目が覚めると山田になっていたんだ。
ウソよ!
伊藤さんって、伊藤祐司は日本でソフトバンクに入ったて聞いたわ。
それが、山田だよ。
ウソよ!
そんなデタラメ私が信じる訳ないじゃないの!
いい加減にして頂戴!
イチゴは、泣きながら飛び出して行った。
酷い!
嫌いになったのなら、正直に言われた方が楽だわ!
あんな嘘をつかれるなんて…。
祐司は、イチゴを追いかけた。
イチゴが道に飛び出した時、そこにトラックが!
あっ!イチゴー!
キューッドン!
鈍い音がした。

あーっ!イチゴー!
見るとイチゴが倒れていた!
イチゴ!
大丈夫か?
イチゴー!
イチゴは祐司の声を遠くに聞きながら意識が途絶えた。
救急車!
救急車を呼んでくれ!

イチゴは病院に運ばれた。
意識不明の絶対安静だった。
頼む、生きてくれ!
頼む…。
祐司は神に祈った。

正志は一軍のマウンドに上がった。
チームは首位争いをしていた。
今日は同率首位のライオンズとの対戦だ。
正志は先発を任された。
ズバーンッ!ズバーンッ!
あの細い身体から、どうやればあんな豪速球が生まれるんだ?
伊藤はそれまで140キロそこそこのスピードだった。
それが150キロに迫ろうかとしていた。
快調に飛ばす正志!
一回二回と三者凡退に退けていた。

監督、伊藤の奴絶好調ですね。
ああ、本当に拾いモンだったぜ。
なんであいつをクビにしたんだろう?

伊藤は三回も四回も0点に抑えていた。
久々に蘇る自信。
思えば、メジャーに渡って、本当の自分のピッチングが出来なかった。
結果を残さなければ、結果を残さなければとそればっかりで
プレッシャーに押しつぶされていた。
2年目は球筋も読まれてしまい、本当に死にたい気分だった。
本当はあの夜、死んでも構わないと多めに睡眠薬を飲んだんだ。
俺も伊藤の事を笑う資格は無い。

六回バッターはトライアウトで祐司からホームランを打って
ライオンズに入った日山だ。
そんな事は知らない正志!
正志にしては、迂闊な甘い球だった。
カキーン痛烈なライナーが正志を直撃した!
マウンドに蹲る正志!

伊藤!大丈夫か?
アタマに当たったぞ!
球場は騒然とした。


祐司はイチゴに付きっ切りだった。
まだ意識が戻らないイチゴ。
おい、お前寝ていないんだろう?
山内がやって来た。
まさかこんなことになるなんて…。
俺のせいだ。
山田になんて言えば、良いんだ…。
お前のせいじゃ無いよ。
俺がちゃんと説明していなかったのがいけなかったんだ。
許してくれ…。
お前も無理しないでくれ。
山内はそう言って、立ち去った。
祐司はイチゴの顔をじっと見ていた。
綺麗な顔のまんまだ。
奇跡的にイチゴの身体は無事だった。
しかし事故のショックからか?
それとも頭を打っているのかイチゴの意識は戻らない。
まだまだ詳しい精密検査が必要との事だった。
祐司はイチゴのそばで、いつの間にか深い眠りに落ちていった。

思いもよらない展開。
イチゴは無事なのか?
正志は…?

トライアウト その5

みなさん、ご訪問ありがとうございます。

更なる展開…。
3人の運命は?どうなるんでしょう?


祐司はいつの間にか深い眠りに落ちていた。
祐司は夢の中でもがき苦しんだ!
お前のせいではイチゴがこうなったんだ!
絶対にお前を許さない〜!
お前のせいだ!お前のせいだ!
すまない、許してくれ〜
お願いだ許してくれ〜!
許してくれ〜!
うわああああぁああああ

伊藤は目を覚ました。
はあはあはあ。。。。
夢か…。

しかし様子が違う。。。
ここはどこだ?
どうやら病院のようだ。
しかしイチゴが寝ている病室では無い。
起き上がろうとすると
伊藤さん、伊藤さん!
まだ無理しないで下さい!
看護師が叫んだ。
え?伊藤?
俺のことか?
え??
それに日本語だ!
それじゃ、戻ったのか?
いったいどうなってるんだ?
今まで全てが夢で、俺は睡眠薬を大量に飲んで病院に運ばれてたのか?

割腹のいい医者らしき男がやって来て
伊藤さん、頭の具合は如何ですか?
伊藤は頭を触って見た。
何故だ?頭に包帯を巻かれている。
覚えていないんですか?
あなたは試合中、打球を頭に受けて病院に運ばれたんですよ。
でも、幸い骨にも脳にも異常は認められませんでした。
本当に奇跡としか言いようがありません。

そうか…。
山田は試合中に打球を受けて意識を失い、自分がここに戻って来たんだ。
すると山田はあのイチゴが眠っている病室に戻って行ったんだな。。。
伊藤は自分のせいで、イチゴが昏睡状態になっている病室に戻った山田の事を思った。
きっと驚いているだろうなぁ。
伊藤は自分のせいで、イチゴがあんな事になってしまい
元に戻れた喜びを噛みしめれる状態ではなかった。



山田は目を覚ました。
ここは…。病室だった。
そうか…。試合中に打球を受けてしまったんだった。
飛んだドジをしてしまったなぁ。
山田は打球を受けた時のことを思い出していた。
あれ?
ベット脇に誰か寝ている…?
恐る恐る見てみると…。

ぎゃァァああああああ〜!!!
山田は叫んだ!
驚いた!
ベット脇に自分が寝ていた!
そうだった。
自分は伊藤の身体と入れ替わっているんだった。
しかし何故俺の身体がここにいるんだった?
しかし今までの伊藤の身体とはちょっと違う感じだった。
あれ?なんだか少し変だぞ!

頭を触った。
髪が長い!
胸が膨らんでいる。
股間を…。
あるはずのものが無い!
きゃぁぁああ。
俺は誰なんだ?

するとそばで寝ていた俺も起きた。
俺も自分を見て、叫び声を上げた!

きゃぁぁああ!!!!!!!!

なんで私が?そこにいるの?
ど太い俺の声がこだました。

俺と自分は顔を見渡した。
いったい俺は誰になっているんだ?


イチゴは長い昏睡状態から目を覚ました。
隣で大声がしていた。
ふにゃふにゃ…。
誰なの?
何故かベットの脇でうずくまって寝ていた。
騒いでいる方を見ると女の子が何だかパニックになっていた。
どうしたの?
と見てみると…。
なんと自分がギャーギャー騒いでいる??
イチゴはこれ以上ない大声で叫んだ!
きゃぁぁああ!!!!!!!!
しかも今まで出したこともないド太い声だった!
私は私と目が合った。
めまいがしそうなほどのショックだった。

ふたりは一緒に鏡を探した。
そこには俺とイチゴが写っていた。
しかし問題は俺がイチゴなのである!
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飛んでもない展開に!
はたしてどうなって行くのだ? お
俺は?イチゴは?

トライアウト 完結編

みなさん、ご訪問ありがとうございます。
こんにちは〜
すごい展開!
ついに完結編となりました。
どう言う展開になるのでしょうか?

ふたりは驚きを通り越していた。
山田は、伊藤と入れ替わったとき、不思議とスムーズに受け入れられた。
入れ替わったショックもあったけど、野球をやらなければと
言う使命感みたいなものが、あったからだ。
しかししかし、まさか今度はイチゴと入れ替わることになろうとは…。

イチゴのショックは大きかった。
どうしてこうなっちゃたのかしら…。
そうだわ!
あなたから実は自分は、山田じゃないって言われて
ショックで道に飛び出してしまって、クラクションに驚いて振り返ったら
目の前にトラックが迫っていた。
その後、意識が途絶えて気が付くと、あなたに…。
この身体になっていたのよ。

ねえ、私たちどうなるの?
大きな山田の身体のイチゴが言った。
それは俺にも解らない。
小さなイチゴの身体の正志が言った。
大きな身体のイチゴが小さな身体の正志に寄り添った。

わっ、なんだか変だわ!
股間が、大きくなって苦しいわ!
どうしたら良いの?
そ、それは…。
ふたりは身体が入れ替わったまま結ばれた。
それは正志にとってもイチゴにとっても不思議な体験だった。

ちょっと話がそれてしまいました。
軌道修正…。(^^;;

あなたと入れ替わった伊藤さんから、打ち明けられた時
私は信じなかった。
こんな事、起こる訳無いじゃない…。
まさか本当にこんな事が起こるなんて…。

そこに山内がやって来た。
イチゴさんが目が覚めたんだって?
しかしこの異様さに山内はすぐに気が付いた。

山内…。
俺だ、山田だ。
伊藤の身体から戻って来た。
何故かイチゴの身体に戻って来てしまったみたいだ。
えええっ、なんて事だ!
じゃ、山田の身体はいったい誰なんだ!
伊藤のままなのか?
それが…。私になっちゃったの。
山田の身体のイチゴ言った。
あまり山内をこんがらかせる積りは無かったが
頼れるのは山内だけだった。

山田は、これまでの経過を山内に伝えた。
そして、山田と入れ替わってやって来た伊藤の
ことも聞いた。
山田、お前は伊藤のおかげで復活したんだ。
あわやパーフェクトと言うピチィングだったんだ。
みんなお前の登板を楽しみにしているんだぞ。

そうか…。伊藤に感謝しなくちゃいけないなぁ。

しかし問題はこらからだ!
まだまだシーズンは長い。
当然登板もしなければならない…。
登板しないと契約違反で莫大な違約金を取られてしまう。

こうなればイチゴさんに投げてもらうしかない。
え?
私?
私が投げなくちゃいけないの???
無理無理!
絶対無理です!

イチゴはグランドにいた。
取り敢えず秘密の特訓だった。
じゃイチゴさん、準備運動は終わったね。
はい、ランニングもストレッチも完璧です。
イチゴは驚いていた。
いくら走っても走っても疲れないのである。
山田の身体の素晴らしさを改めて感じた。
そして運動するのがこんなに気持ちが良いものだとは思わなかった。
じゃイチゴちゃん、軽く投げて見て!
こうですか?
ヒョイッ
ズバーンッ!
わっ!キャッチャー役の山内が悲鳴を上げた!
凄い!
これは素人の投げ方じゃないぞ!
えへ♪
こう見えても中学時代はソフトボール部のキャプテンだったのよ!
強肩キャッチャーで通ってたんだから〜ウフッ♪
イチゴは得意げに言った。
もうショックは感じられなかった。
イチゴの中の何かが目覚めた感じがした。
あと気を付けるのは、ボークだよ。
まずセットポジションに構えたら身体を動かしたらいけないんだ。
セットポジション…?
小さなイチゴの身体の正志が演って見せた。
なるほど…。
あとキャッチャーとのサイン。
次はカーブを投げてみよう。
次はシンカー
イチゴの特訓は続いた。
しかしイチゴの飲み込みは早かった。
カーブなんて投げたことも無いのに山田の身体が覚えているのね。
言われた通りに投げたら、ちゃんと投げられた。
よし、取り敢えず教えることは、もうないよ
打たれるのは仕方ないから、何も考えずに
ストライクだけ投げてくれ。
打たれても違約金を取られることは無いからね。
登板しないと、とんでもない違約金を取られちゃうんだ。
イチゴちゃん、頼むよ。
打てれても良いから。
打たれて、さっさと引っ込んじゃおう! ネッ♪
イチゴ達は形だけの登板の予定だった。

ついにイチゴが登板する日がやって来た。
わっ中学の時のソフトボール大会の試合とは全然違うわ…。
当たり前だけど…。
イチゴは膝が震えた。
球場の隅で山内とイチゴの身体の正志は祈った。
神様…。
お願いです。
イチゴをお守り下さい。

その頃、天国では…。
神様、また人の魂を入れ替えて遊ばれているんですか?
好い加減にしないと罰が当たりますよ!
おおっガブ、待て待て今ちょうど面白いところなんじゃよ。
神様!
分かった分かった。
この試合が終わったら元に戻しますよ。
戻せば良いんでしょっ!フンッだ!


いよいよイチゴの登板。
イチゴは山内と正志の言葉を思い出し、軽く投げてみた。
ズバーンッ!
バッターの胸元に速球が決まった。
ほよっ♪
結構行けそうだわ。
次はカーブを投げてみましょう。
ぐぐっズバーンッ!
バッターは大きくのけ反りストライク!
意外と楽しいわっ♪
またカーブ!と見せかけて…。
内角に速球を!
見事に三振!
イチゴは女ならではの配球で相手バッターを翻弄した。
すぐに打ち込まれて、ベンチに下がるはずが、五回まで0点に抑え
勝ち投手の権利を得ていた。
結局イチゴは3-0で完封してしまった。
ファンは熱狂した!

正志は思った。
何故自分が勝てなかったのか。
イチゴの投球を見ていると生き生きしていた。
自分も昔はあんな感んじで楽しんで投げていたじゃないか!
伊藤の身体に乗り移った時も、投球が楽しかった。
正志は野球がやりたくてやりたくてたまらなくなった。

神様!
お願いだ!
元の身体に戻して下さい!
正志は心の中で祈った。

天国で見ていた神様とガブ。
ほう、何かをつかんだようじゃのう。
良かろう!
元に戻してあげよう!
充分楽しませてもらったしのう。
神様は杖を振った。

翌朝、正志は目を覚ました。
台所でイチゴが朝食の準備をしていた。
良い香りが漂う。
え?え??
元に戻っている!
イチゴが嬉しそうにこっちを見ている。
ふたりは目を合わせて喜んだ!
そしてイチゴと正志は抱き合った。
俺たち元に戻ったんだね。
うん、イチゴは正志に抱きついて離さなかった。
そして試合でのことなどなど、たくさん話をした。
バッターに対するの気の緊張は堪らなかったわ!
配球を色々考えてとても楽しかった。
とても最高の体験をさせてもらっちゃった。
うん、昨日のイチゴの投球を見て、俺も野球をやりたくてやりたくて堪らなくなった。
これからは俺も頑張るよ!
ふたりの話はつきない。

山田とイチゴはシーズンを終えて、帰国した。
山田は後半大活躍をして
なんと18勝をあげていた。
空港では、伊藤が出迎えていた。

お帰り!
やあ!
山田と伊藤は目と目を合わせて
拳を合わせた!
伊藤は退院した後、チームの柱として大活躍した。
伊藤の活躍も後押ししたのか?
監督の春山が野球殿堂入りを果たした。

ありがとう!
お前のおかげで立ち直りことが出来たよ。
それはこっちのセリフだよ。
イチゴさん、無事で良かった!
伊藤さん、あの時は御免なさいね。
おいおい、俺を忘れてはいないかい?
あ、山内さん!
おの時はお世話になりました。
ははははは
みんな、話は尽きない!
伊藤は来シーズン、ホークスのエースへと成長し
山田も来シーズンは開幕当初から大活躍して
ワールドシリーズ進出へ大きく貢献するのだった。
山田はイチゴを大切にしイチゴは山田を愛した。

神様、もう人の魂を入れ替えて遊ぶのはやめて下さいねえ!
分かっておるわい!
ふふふ…。

今年もまた沢山の選手が最後の望みを賭けてトライアウトを受ける。
その中で、球団に拾ってもらえるのは、本の一握りだ。
しかしトライアウトで拾ってもらえなかった選手も
まだまだ人生は続く
新たな道を目指して生きて行くのである。
人には挫折は付き物である。
それを乗り越えて楽しい人生を歩んでいきたいものである。

終わり
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よろしくお願いします。
下手ですがイラストを描くのが好きです。
暖かい絵を描きたいなぁ。

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